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2月12日S「ネズミの涙」こんにゃく座世田谷PT

作・演出:鄭義信、作曲:萩京子。ウイシンの快進撃が続いている。昨年の小宮孝泰の一人芝居「線路は続くどこまでも」も小品ながら感動的だったが、この舞台は傑作だ。こんにゃく座は30年ちかく観ているが、この舞台はこんにゃく座の日本語創作オペラの目標を達したものだろう。登場するのは天竺ネズミの旅回りの一座。芝居の品ベースはブレヒトの「肝っ玉おっ母か」。ただし一座の移動は幌車ではなくおんぼろバス。またリーダーはおっ母だが、ダンナがいて息子と娘の4人家族。一座の出し物は4人でできる西遊記だけ。「肝っ玉」と同じく、世界は戦争の渦中。どぶネズミ軍とクマネズミ軍が戦っている。戦場を旅して興行する一座の劇中劇がふんだんにちりばめられて、ウイシン独特のユーモアたっぷりで賑やかに進行する。なにより驚いたのはこんにゃく座の俳優たちの演技水準の急激な上昇だ。いままでは歌の場と芝居がともすれば分離していたのが。今回は歌も芝居も渾然一体で見事に融合している。萩の曲も韓国の打楽器サムリノリを取り入れて、芝居の一つの脈として染みとうるような曲だ。だから歌と芝居の境目がない純然たる歌芝居になっていた。兵隊にとられて惨殺される息子、どぶネズミの奇襲を町にしらせるためバスの上で太鼓を連打して銃殺される娘。一家はつぶされ、米粒より小さいネズミの涙が世界を覆う。それでもおっ母はどぶネズミに呼ばれても興行を続ける。それしか生きてゆく術はない。なけなしの元気で何とか生き続けるネズミたちの姿は今の我々の姿だ。それを歌うラストの合唱は感動的だ。鄭義信が貧乏ネズミたちにあくまで寄り添う姿勢は彼の劇作群を貫いている。是非観ることをお勧めする。14日(土)は13:00、19:00、15日(日)は11:00、16:00。世田谷パブリックシアター。

 

by engekibukuro | 2009-02-13 13:37 | Comments(0)  

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