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4月6日M朗読劇「春子」「かくて新年は」文学座新モリヤビル一階

今年建設された文学座新モリヤビルでの初公演。文学座有志の「八十八の会」の公演だ。朗読劇「春子」は作:上崎収で杉村春子の出生の秘密の物語で、今年4月4日が十三回忌の祥月命日にあたる。「かくて新年年は」森本薫の前期作品で「華々しき一族」に次ぐ二作品目。双方とも戌井市郎の演出。「春子」は継母役の山本道子が情愛深く演じて感動的だった。「かくて新年は」は森本の25歳で書いた戯曲とは信じられないほどの成熟した作品で、人間や社会の見方が大人の目だ。たたきあげの小さな会社の社長の一家の話だ。妻は資産家の娘らしい。この会社の大阪担当の若い重役は大学出で洋行もしている。この重役は東京にでてくるたびに社長夫人と密会している。それも社長が重役を会社に繋ぎとめるためにわざと機会をつくってやっている節がある。この二人の色模様と会社を株式会社にするためのビジネスの暗闘の話、この一家の客間に出入りする妻の妹夫婦や社長の姉の話が見え隠れして、表層と裏の出来事の世界が実に巧みに織りあわされている。しかし、この会社に労働争議が起こったり、重役の裏切りがあったりして、会社がピンチに陥る。最後は大阪の重役の許へゆく決心した妻が、夫の窮境に接して大阪行きを翻意して終わる。戦前の日本の社会、風俗をまざまざと感じさせる優れた完成された作品だった。俳優たちはその時代の人々の喋り方、身振りを演じるのが少々ぎこちなくて、戯曲の力はナマで感じさせたが、芝居の興趣はちょっと物足りなかった。ただ、社長を演じた林秀樹はたたきあげから成り上がった男の複雑な内面を如実に感じさせる好演技だった。しかし実業の世界と人間の生活をきちんと覚めため目で描きだす森本の才腕に驚く。それは今の演劇に欠如してるものを指し示しているようだ。それを気づかせてくれた好舞台だった。、、 

by engekibukuro | 2009-04-07 14:18 | Comments(0)  

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