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4月8日M★「三文オペラ」S★★「冬の入口」

★(作:B・ブレヒト、音楽:クルト・ヴァイル演出:宮本亜門、シアターコクーン)。宮本がヴァイルの音楽を主体にして舞台を創ったのが成功している。ブレヒトの台本は話の整合性なんかお構いなしだから、ヴァイルの歌で客を惹き付けるのが正解だろう。ポリー・ピーチャムを演じた元モー娘の安倍なつみがよかった。歌も上手いし芝居も生気溌剌。私は大昔初めて俳優座の「三文オペラ」を観た時のポリーは市原悦子だった。その後、何本も観たが市原に匹敵するポリーを観たことが無かったが、この安倍のポリーがようやくソレに当たる演技だった。ポリーの母親シーリア役の松田美由紀も破天荒で面白く、ピーチャムのデーモン小暮閣下が臭くなくて安定感があり、久しぶりの舞台の警視総監役の田口トモロヲが独特の雰囲気で、秋山菜津子のジェニーの暗い存在感が舞台の一つの柱になり、むろん三上博史のメッキ・メッサーも悪くはないのだが、背徳の臭いがちょっと乏しい。三幕それぞれの幕切れのフィナーレをきちんと盛り上げて切ってゆくのも快い。が、最終のフィナーレ(メッキが縛り首の処刑の寸前で女王の戴冠式の恩赦で赦免され、年金までつく結末)は絢爛豪華で盛り上げ過剰だ。これは好みの問題かもしれないが、この意表をつく大逆転の結末のバカバカしさは、もっとあっさりやったほうが効果があるのでは・・。このバカバカしさは、この世の中の仕組みのバカバカしさに見事に重なり、これぞブレヒトの真骨頂だと思ってていて、凡ゆる芝居の結末でこの結末が一番だと妄信しているからだ。
★★(作:長谷川孝治、演出:和田憲明、赤坂レッドシアター)。この芝居は長谷川が主宰する弘前劇場での公演を観ている。長谷川に地方の演劇の職業をもった俳優と東京の職業俳優との根本的な相違、魂と技術について書いた文章がある。この東京の俳優たちが演じた舞台が決して悪いわけではなく、弘前劇場の上演との優劣を問うわけではないが、にもかかわらず長谷川の文章に書かれたことの例証だと思えてしまった。このことはもっと考えなければならぬ難問だと思うが、この舞台がそれの起点になったことが有益だった。

by engekibukuro | 2009-04-09 13:14 | Comments(0)  

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