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12月9日M★「マレーヒルの幻影」S★★「海獣」

★作・演出:岩松了、本多劇場。蜷川幸雄はいわまつのことを狂気の作家だといったが、その狂気の論理が現実と正と折り合ったときの無類のイメージが、岩松の独特の難解・難渋さを溶かしてゆく。役者達(麻生久美子、ARATA、三宅弘城、荒川良々、市川実和子、松重豊、外人俳優3人)が、その溶かされた流れに自然にのって、岩松の世界を形成してゆく。スコット・フィッツゲラルドの「グレート・ギャツビー」を、1929年の大恐慌時代のNYの日本人コミュニテイの話に置き換える荒業のエネルギーと、俗情に結託する資質皆無の岩松の孤独でしかありえない作家性に敬服する。岩松が唐十郎から学んだという、芝居が終わるとき1本のリリカルな線が走ればいいんだという言葉が、この芝居にも顕現していた。
★★作:サジキドウジ、演出:東憲司、劇団桟敷童子、すみだパークスタジオ。黒船が浦賀に来航して開国を迫った時代。横浜に異人屋敷が建てられ、異人相手の遊郭ができた。周辺の漁村は海に出るのを禁じられ、疲弊してゆく。その漁村が舞台。その村の掘っ立て小屋に女衒に買われた、少女4人が、遊郭開設までの間、預けられる。異人相手の女郎になる恐怖に堪えられず、少女たちは自殺するが、一人は生き残る。その少女たちを巡っての村人や浪人たちの群像劇。時代の変わり目に犠牲になるのは最下層の人々だ。その中でも最悪の犠牲になる少女たちの物語は胸をうつ。ただ、サジキドウジの芝居には毎回忘れがたいユニークな人物が登場するのだが、今回はそういう人物は見当たらず、芝居が型にはまってきた感じが拭いきれなかった。

by engekibukuro | 2009-12-10 13:53 | Comments(0)  

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