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8月20日(金)S「叔母との旅」シス・カンパニー

原作:グレアム・グリーン、劇化:ジャイルズ・ハヴアガル、演出:松村武、青山円形劇場。一人の役者が複数の役を演じ、そのうえ一人の役を複数の役者が入れ代わり、立ち代りで演じるというめまぐるしい舞台。これを段田安則、浅野和之、高橋克実、鈴木浩介の4人が務める。銀行の支店長を勤め上げ、50代半ばにして引退生活を送るヘンリーネは、庭でダリアを育てるのを趣味にしている独身男だ。母親が死に、その葬儀で50年数年ぶりに叔母のオーガスタと対面を果たす。この自由奔放で怪しげな過去をもつ叔母が、ヘンリーを強引に旅の道連れにする。パリ、ヴェニス、イスタンブール・・・。叔母には傍若無人の特殊なサービスも叔母にしている黒人の召使いワーズワースがいる。叔母の旅の目的は終生の恋人らしいある男を捜すことらしい。旅の最終地点はパラグアイのアスンシオン。ここで、75歳の叔母は追い続けてきた男、ヴィスコンテイを捕まえた。怪しげなゲシュタポとも商売したこともある老人だ。
 叔母役は段田一人が演じるが、ヘンリーは全員が演じる。衣裳も終始変えない。役者はこの芝居では純粋のに客の想像力の媒体に徹する。そのものではない。松村の演出は、短い場面をテンポよく繋げて、役者も巧く入れ替わって、全員意気があって、実に面白い舞台を創りあげた。グリーンの原作は、こういう形式でしか劇化できないだろうと思わせる舞台だ。凡庸な善人ヘンリーは、叔母(実は実母らしい)によって、人生は悪の薬味がなければ、生きてゆきかいがないないことを叔母から学んだのだ。ラスとはヘンリーがロバート・ブラウニングの詩をつぶやくところで終わる。”神空にしろしめる、すべて世に事もない”。私はG・グリーンの愛読者だった。この芝居で読み返す楽しみができた・・・。

by engekibukuro | 2010-08-21 11:40 | Comments(0)  

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