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12月15日(水)M「同窓会へようこそ」龍昇企画

作:直井おさむ、演出:小林七緒、SPACE早稲田。
 龍昇企画の常連俳優の直井が書いた芝居だ。現在50すぎの中学校の同級生女一人男5人がが40年ぶりに集まった。もう顔と名前が結ぶ付かないぐらいの久しぶりの集まりだ。しかし、呼び出した幹事がいつまでたってもこない。なしくずしに呑みだすのだが、実はこの会は中学のとき、陰に陽に教師を含めて、凄さまじいいじめにあった男が、幹事を偽って集めたのだ。そのいじめのトラウマが50すぎても消えない男の復讐のためだ。この男は、そのイジメのサマをなまなましく再現して、最後は刃物まで持ち出す。いじめたことなど忘れてしまった彼らは、大混乱になり、現在のさえない人生までさらけだす破目になった。直井はあるとき某作家に「登場人物がみんな自己解体してボロボロになっていく、そんな芝居を書いてよ」と言ったら、「誰がそんなもの観たがるか」といわれて、自分で書くしかないと・・。たしかにボロボロになってゆく過程はリアルで迫力たっぷりでよく書けていると感心した。だが、そのリアルは街頭の喧嘩をみるような一寸ベタ気味で、演劇的に昇華できていない恨みがあった。それでも小林は、きちんとした芝居にするような配慮はしていて、それはいじめられ男を演じた中原和宏の演技で救われた。もともと飄々としたうまい役者だが、演劇的人物として距離をおけて観ることができた。演劇的な破滅志向の芝居というより、現在の悲しい日本人の姿が浮かび上がってきた芝居というべきか・・・。嬉しかったのは、流山児祥が10年以上育ててきた、中高年の女性ばかりのアマチュア劇団・楽塾の桐原三枝がプロの役者と堂々と渡り合って、見劣りしなかったこと・・。
▼メモ。大笹吉雄「新日本現代演劇史ー東京五輪篇1963-1966」を読了。アングラ出現前夜の時代の演劇界、緒形拳が売り出したときの新国劇、花柳章太郎の急死、文学座の分裂、多彩で華やかな時代を髣髴させ、大江美智子の女剣劇が朝日の劇評に載った時代だ。この頃の新劇の代表作は観ていて、しりあいの名前もちらほら出てくる。

by engekibukuro | 2010-12-16 10:54 | Comments(0)  

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