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1月18日(火)★新国立劇場★★青山円形劇場

★「わが町」(作:ソートン・ワイルダー、翻訳:水谷八也、演出:宮田慶子)
 この芝居は1938年にブロードウエイでの初演いらい、世界中で上演されている。わが国でも戦前森本薫の訳で上演され、戦後文学座でも上演され、またこの芝居の日本を舞台に翻案されたMODEの松本修演出の「わたしがこどもだった頃」という秀作がある。この舞台での原作のエミリーとジョージにあたる役を演じた黒木美奈子と有薗芳記の演技が忘れられない。それほどポピュラーな芝居で、小さなアメリカの町で暮らすごく普通の人々の生と死をみつめたワイルダーの視線の、その眼光が客の心を捉えて離さない芝居だ・・。しかし初演当時は賛否が別れていたようで、なかなか複雑だったようだ。パンフレットの一ノ瀬和夫のよれば、初演当時は大恐慌の時代で、そういう社会的な現実を見ないで、歴史を超越して永遠の相から人間をみつめる芝居は現実逃避だと思われた。また訳者の水谷の紹介では、劇作家エドワード・オルビーは”「わが町はあらゆる戯曲の中で、もっとも非情、かつ悲しい作品のひとつだ”と語り、また”この戯曲がいつも甘い感傷的なものとして上演されることを嘆いている”そうだ。座談会で文学座の坂口芳貞はテネシイー・ウイリアムスの「回想録」でワイルダーが「欲望という名の電車」をえらそうにこきおろしたことを語り、ワイルダーの上から目線を気に入らないという・・。また一ノ瀬はこの芝居がテーブルと椅子だけの舞台であることの、ワイルダーが京劇や能をも熟知したきわめて当時としては実験性の高い作品だとも書いている。しかし、水谷が紹介している劇作家ランフォード・ウイルソンの「『わが町』が徹頭徹尾シニカルで、冷酷なまでに正確な戯曲だという事実を見逃してしまう」という言葉が正しいなら、これほどポピュラーな芝居になりえただろうか。今回の舞台は、そういうこの戯曲の世界の複雑さを充分再考させてくれた舞台だった。ただ、中ホールの広さが、ニューハンプシャーの点のような町グローヴァーズ・コーナーズのコミュニテイの生活の空気の凝集度を希薄にさせていた感じがあった。しかし、しかし墓を穴に見立てたアイデイアはこの芝居の要の生と死の接線の明示を確保していた。町の人々にさいたまゴールドシアターのメンバーが出ていたことも嬉しい。
★★「ちんけさんと大きな女たち」(作・演出:近藤芳正)近藤のユニット・バンダラコンチャの芝居。売れない役者を演じる近藤をめぐる「南海キャンデイーズ」の山崎静代など10人の女たち。舞台上でいろいろあっても近藤は仕合せせそうだった。

by engekibukuro | 2011-01-19 11:43 | Comments(0)  

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