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7月26日(火)M「ゆすり」(作・演出:青木豪)

アル☆カンパニー、ザ・スズナリ。
 離婚した妹に身の回りの世話をしてもらっている独身の中年男のもとに、30年前に父が営んでいたアパートの住人が突然訪ねてきた。中年男は大谷亮介、妹は井上加奈子、訪問客は平田満。秋田で薬局をやっているという男とは中年男は年賀状の交換ぐらいしか付き合いが無い・・。男は疎遠なのに、記憶力だけはいいといって30年前の細々して中年男との思い出を喋りまくる。中年男は殆ど覚えていなくて憮然とせざるを得ないが、仕方なく一晩男を泊めることにする。実はこの男、ドラッグストアの進出で薬局がつぶれ、家族も離散、いまは東京でその日暮らしの毎日・・・。追いつめられて、この中年男を事業への投資と称して中年男をゆすることを思いつく・・・。それは30年前に中年男と妹の近親愛、禁断の関係を目撃したことをネタにするゆすりだ。ここから事実と思い込みと記憶の錯綜がドラマを複雑きわまる展開にしてゆく・・・、兄と妹は罪悪感からいもしなかった双子の妹を捏造したり、思い込みがきわまるとそれが事実になってしまうとか、人間の記憶と事実とのあいまいさが舞台をスリリングでミステリアスな迷宮と化してゆく・・・青木の筆力、それに応じる3人の役者の実力が際立っていて、緊張感がみなぎって・・・。ゆすりの攻防は兄妹の結束の力に男は敗北する。ゆりぎのない舞台だったが、この芝居で感動的なのは最後には兄妹の禁断の愛が、結束の力の昂揚によって一つのノーマルな愛の形に昇華した兄妹の姿だ・・・。

by engekibukuro | 2011-07-27 09:17 | Comments(0)  

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