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10月12日(水)S「同居人」名取事務所

作:別役実、演出:K・KIYAMA。

別役の新作。ボロアパートでルームシェアをしている瀕死の叔父の遺産をあてにした借金で暮らしている男と、夫のDVにたまりかねて、ヴェランダから突き落として殺してしまって正当防衛だと主張して裁判中の女・・。この二人の奇妙な日常に、ホスピスの老人ホーム緑風園から里帰りと称していまにも死にそうな老人が付き添いつきでやってきた・・。同居の二人は、それぞれの親戚の叔父だと誤解して、それなりに二泊三日の里帰りに応じたのだが・・・。ところが、この老人がとんでもない食わせ物ので、末期癌で瀕死の病人だと思わせて、人の家にあがりこんで衣食を強要する詐欺まがいの常習犯、付き添いもそれらしくしているが共犯だった・・。この不良老人を演じた三谷昇が絶品だ!狡知を働かせてふてぶてしい老人を演じて、今の過酷な高齢者社会で生き抜くには、こういうバイタリテイがなければやっててゆけないと、同じ高齢者のわたしも”勇気付けられて”みたいな共感を強いられるような真実性がみなぎっていた・・。同居人二人は騙されたわけだが、同居人男1は当てにした叔父の遺産を叔父が大震災の義捐金に寄付してしまい、債鬼に追われる運命に・・。怠け放題の生き方が罰を食らったのだが、更正して働くなどと、この男は考えない・。不良老人のテーマソングが「タワラハ、ゴーロゴロ」という童謡で、オレをタワラみたに転がせとほざいていたのと同様に、まともにこの今の世をいきてゆくなどと改心しないで、債鬼に転がせられることを選ぶ・・。今の肯定的な生き方などとというものの虚偽を感じているのからこその態度だとおもわせる・・。この芝居は今までの別役の不条理劇の感触とちがうまさに今の社会を描いた現実をじかに生々しく描いた条理そのものの劇だ・・。演出のKIYAMAは当初困惑したようだが、この舞台のザラザラしたマチエールはみごとな出来だった・・。不条理劇がもつ演劇的な悦楽のヴェールは消えててしまって観ていてきつくて、別役芝居の定番小道具のビスケットがでてきてホットするような芝居だった・・。別役の現下日本への真摯なメッセイジとして受け取ってた・・・・。

by engekibukuro | 2011-10-13 13:19 | Comments(0)  

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