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10月20日(木)MEMO





「群像」10月号ー高橋源一郎「恋する原発」380枚を読む。主人公はAVの監督で、話もAV業界のアレコレや近頃業界も下り坂で、企画に四苦八苦していて、その企画も22歳の童貞と72歳の老婆が演じる「稲元ヨネさん72歳・夫が戦死してから50年ぶりのセックスです、冥土の土産にしたかった」というのや、「恋するために生まれてきたの・大正生まれだけどいいですか」などというもので、もう末期症状のありさまを呈していて、四文字コトバがバカバカでてくるポルノ小説とみまがうばかり・・・。そこへ震災がやってくる、この業界もなんとかしなければと、「東日本大震災被災者のもなさんへのチャリテイAV」を企画するのだが・・・そんなギッタンバッタンのゴシック活字が頻出するページが、突如中断され大マジメな「震災文学論」が挿入される。NYの9.11のとき、スーザン・ソンダクのテロリストを擁護したとされた文章への全米の非難の話からカワカミヒロミ(著者名全部カナカナ表記)の18年前に書いた小説「神様」と今年書いた「神様2011」が雑誌に同時掲載されたこと、ミヤザキハヤオの「風の谷のナウシカ」劇場版116分と完全版8時間の差異と”腐界”の話、イシムレミチコ「苦界浄土」の水俣病の重患の少年の話の引用・・・。人間を襲う災厄と「神様」のクマ、ナウシカ、人間離れした重患の少年の透きとおった笑顔・・、ヤアモトヨシタカ「フクシマのゲンパツ事故をメグッテ」のジュール・ヴェルヌ「人口島」の人間の驕りへの警告・・。文学の異常時・災厄への役割!が述べられ、元のAV界へ・・。終末は福島第一原発の前でのガイガーカウンターが鳴り響くなかでの1万組、2万人のセックスシーン・・・。
・・・<ってのはどう?その案却下。なんでー そんなのAVじゃないからだよ>
これは、震災後の画一的になってしまいつつある震災・原発事故へ言語や思考への撹乱、日本がこれを機に根源的なヴィジョンを自分のものにするための突破口を開かんとする渾身の小説だ・・・。

by engekibukuro | 2011-10-21 10:07 | Comments(0)  

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