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12月31日(土)映画・無言歌(監督・ワン・ビン)Hトラスト

 毎年恒例の大晦日の映画鑑賞:1960年、中国、毛沢東は百花争鳴政策が行過ぎ、行き過ぎ分子を右翼と断定、反右翼闘争を展開、右翼分子をゴビ砂漠近傍の荒野の壕のうちに収容、荒野を開墾させた。全国飢饉の年で、この収容所の食事はほとんど穀類がない粥だけ、人々はどんどん死んでゆく、他人の吐しゃ物を嘗め尽くしたり、死者の肉を食らうまで飢えに追い詰められている。この映画は中国革命の負部、毛沢東批判などという歴史的な暗部を描くものでも、極限状況における人間の実存を究明するようなものではない・・。殆どが壕の中の寝台での生と死の境目で毎日過ごしている人間の薄明のありさまを記録するようにフィルムに映し出す・・。死者も荒野の穴に放り込まれるだけの世界で、それでもなんとか人間らしく助け合ったりするシーンもあるが、死者の妻がやっと訪れてきて、夫の死骸を探し、肉を剥ぎ取られて砂に埋もれている死体の上で号泣する悲惨なシーンは映画は中心にならざるを得ない・・・。今の中国の隆盛はこんな暗い歴史、背景のもとで成長したというような感慨より、人間がどうにもならない状況で死と向かい合う局面はどういうものか、それが収容所の政治的な圧制のもとではあるにしても、淡々といってもいいほど、音楽も一切なく冷静に凝視する画面、見ていてなんで今の時代にこんな見ていて早く終わってほしいような悲惨な画面を続けるんだと思わざるをえなかったのだが、終わってみると、名状しがたい人間にとって貴重な局面を見たという忘れがたい感銘を残されているのに驚く!類例のない映画だった・・。

by engekibukuro | 2012-01-01 13:01 | Comments(0)  

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