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2月14日(火)M「トカトントンと」地点、KAAT<大スタジオ>

原作:太宰治、演出・構成:三浦基、美術:山本理顕。
 原題「トカトントン」に三浦は”と”をつけた・・。この芝居は、「トカトントン」と同じ太宰の「斜陽」によって構成されている。この小説が発表された終戦直後の状況・・、玉音放送が流れ、戦後の復興の槌音(トカトントン)、新しい民主主義のいぶきを示す、若々しいデモ行進・・、それらの時代の様相に複雑に反応する太宰・・。時代の息吹を感じさせるデモを見て、いったんは感嘆するのだが、どこからかトカトントンという音が幽かに聞こえてきて、そういう高揚した気分がたちどころに消えてしまう・・。”いったい、あの音はなんでしょう。虚無(ニヒル)などと片づけられそうもないんですま。あのトカトントンの幻聴は、虚無(ニヒル)をさえ打ちこわしてしまうのです”周囲に太宰ファンがたくさんいた若い頃、この小説を読んだときは、この音がネガテイブの極点の音だと感じたものだが、そういうものとしての「トカトントン」も含まれるが、三浦は日本の近代化の過程としての戦後の時代と関連させている・・。だから、トカトントンという音が復興の槌音風の大きな打楽音で、別にラストに子どもが安部聡子と連れ立ってでてきてトカトントンと叫ぶのだが、どうもソレらしいトカトントンは聞こえてこなかった・・。プレスシートその他の三浦の言説と、舞台の独特の三浦台詞術、身体行動、背後の壁面全面の電子美術などとの関連など、面白いのだが、ややこしくて整合的な印象に落着しない・・。一番印象に残ったのは、しばらく見なかった安部聡子の顔が実にいい円熟した顔になっていたこと、この人の表情はとても鋭角的で、「青年団」にいたときの「S高原にて」での冷酷な女性を演じた時の印象はいまでも生々しいが、今回の舞台の柔らかい表情はとてもイイ感じだった・・。
▼KAATに行く前に横浜美術館で「松井冬子」展を見た。日本画の英才で絵はさすがだが、タイトルが「絶え間なく断片の衝突は失敗する」とか「この疾患を治癒させるために破壊する」などのおそろしく観念的なもので、題名と絵を見比べるとなんだか面妖で・・、しかしこの取り合わせが魅力だと思うマニアックなファンが大勢いりらしいのは、わかる気がする・。コレクターが沢山いるようだ。美術館のコレクション展で写真家・石川真生の沖縄の写真をみて、バランスがとれた気分になった。
・崎陽軒のしゅうまい弁当は横浜で買ったほうがうまいね・・。

by engekibukuro | 2012-02-15 08:42 | Comments(0)  

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