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4月23日(月)



▼「梅山いつき著「アングラ演劇論」(作品社)。この本、じつに面白かった。感服した。長い間、梅山さんとは雑誌「シアターアーツ」で同じ編集委員をあyってきたのに、こんなに書ける人とは!不明を恥じる。早稲田の博士論文が、そのまま浩刊行されたのも頷ける。
・序章:アングラ演劇の文態ー言語活動の展開と新たな劇言語の創出 第1章:贋物の肉体ー唐十郎 連作「ジョン・シルバー」 第Ⅱ章:騙る肉体ー鈴木忠志「劇的なるものをめぐって・Ⅱ」 第Ⅲ章:我慢する身体ー別役実「正午の伝説」 第Ⅳ賞:革命にひきさかれる身体ー演劇センター68/71「翼を燃やす天使たちの舞踏」 終章:叛乱する言葉、偽りの肉体、運動する身本。
 60年代のアングラ劇は私は殆ど観ているつもりだが、この80年生まれの著者の、文献や、聞き書きなどの間接資料だけで書かれた本にまったく違和感がない。間接資料だけで60年代の舞台を彷彿させることができた想像力はたいしたものだ。あの頃は、ただ、ただスゲエ!スゲエ!とよく芝居の意味も考えもしないで観ていたから、この本のようにアングラ劇の構造や意味を、様々な論点から吟味するのはたいへん勉強になる。それは劇団唐ゼミの中野敦之が唐作品を演出した舞台が、唐の芝居を改めて見直すことに貢献しているのに呼応する。特に鈴木忠志の「劇的・Ⅱ」を論じて演技の真贋についての分析が優れていたと思う。別役の「正午の伝説」の天皇へのお詫びとして排便を我慢する傷痍軍人を、これは天皇その人の戯画だと断じたのがすごい・・。ただ、唐十郎の「ジョン・シルバー」論は精緻な視点・分析で面白いが、ややトリビアルで唐演劇全体のイメージからするとバランスを欠いている感じがした。また、「翼を燃やす天使たちの舞踏」は私は真冬の後楽園で観て、一緒に行った仲間が皆風邪を引いてしまったのを思い出すが、この論自体はたいへんよく出来ていると思うが、唐、鈴木、別役と同じ分量で佐藤信の仕事を扱って欲しかった。しかし、アングラ演劇の相貌をこれだけ独自の視点で論じたからこその注文で、なによりこの先展開されるだろうアングラ論へのイキイキした展望を感じさせる視座を作ったことが有意義なのだファ。幅広く参照された文献にも感心したが、なにより文章がいい。章、節の組み立てが読みやすく出来ていて、リーダブルだ。立派な成果で、知っている人だけに嬉しいことだ・・。
・夜は神保町銀漢亭で湯島句会、今回は一句も選ばれなかった。今回の兼題が難しくて、ことば遊びに終始して空疎な句になったから当然でしょう。谷岡健彦さんは相変わらず高得点で選ばれていて、まあ、一月に一回谷岡さんや堀切克洋君に会えるのがなにより・・・。

by engekibukuro | 2012-04-24 14:58 | Comments(0)  

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