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8月15日(水)M「Happy Daysー幸せな日々ー」

作・演出:鐘下辰男、ザ・ガジラ、笹塚ファクトリー。

 この芝居の初演の企画は、流山児祥が、鐘下に書かせ、ケラに演出をさせた流山児★が上演した作品だった。鐘下とケラの組み合わせという、まるで水と油のような組み合わせを実現させた流山児の発想と腕力に感嘆した記憶がある。そして、ケラの演出が、端正できちんとしたもので、鐘下の世界を落ち着いて観られたという、フシギな体験だった・・。
 今回は大幅に書き換えたそうで、舞台の様相は違ったものだ・・。下手にトタン板を被せた井戸の穴があり、上手に柱が4本あるだけの島次郎の美術・。その井戸に最近、痴呆症の母親が飛び込んだという・・。ここはこの土地の古い名家鬼藤一家の山の家・・、長男が千葉哲也、次男が寺十吾、妹がとみやまふみこ。この三人が、この土地の有力者である産業廃棄物・サンパイ業と水道事業をやっている塩野谷正幸が演じる谷村に、なんらかの形で支配されている。妹は谷村のセックスだけの相手だ・・。長男は谷村に苦境にたたされているようで、その打開に土地のヤクザの若者(山口航太)に最後の頼みを託す・・、市長の婚約者を誘拐して身代金をと・・、ここらの事件の出来事は一切説明はない、次男はジャーナリストらしいが、この男の言動もわからない・・。とにかく皆公私とも、たいへんな極限状況に追い詰められているようで、さいごにはナイフや拳銃まででてくる。芝居も鐘下スタイルの怒号や絶叫がたえまないハイテンションで終始するが、旧家の想い出や土地のわらべ歌が時折はさまれていたりして、呪われた旧家の一家と成り上がりの実力者との抗争がおおきな枠らしい。客は出来事はよく解からないから、人物の激しい言動に反応するしかない・・。だから鐘下スタイルの激しい言動のドラマに習熟した千葉、塩野谷、寺十の演技を堪能するのが、この舞台では正しい鑑賞法で、若い山口もとみやまも谷村の身重な妻を演じた「毛皮族」の柿丸美智恵も、そのスタイルを立派にこなして、劇全体のテンションの昂揚に貢献していた。現実の厳しさと演劇の激しさの狭間の困難をクリアーして、独自の演劇世界を打ちたててきた鐘下演劇のサンプルのような舞台だった。 

by engekibukuro | 2012-08-16 09:48 | Comments(1)  

Commented by 山田 at 2012-08-16 17:06 x
江森さま、 青森・大間原発計画に唯一人で立ち向かった一人の婦人がいなければ、もしかしたら私たちの世界は3・11で終わっていたかもしれない。歴史の「if」。

マガジン9に書いた「大間原発は世界を破滅させるラスコーリニコフの斧か」第2回。お読みいただければ幸いです。http://www.magazine9.jp/genpatsu/120808/

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