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11月11日(日)M「タtクシー」こまばアゴラ劇場

作:くらもちひろゆき 畑澤聖悟 工藤千夏、架空の劇団+渡辺源四郎商店 合同公演。
 盛岡の劇団「架空の劇団」のくらもちの震災時の実体験を基にした芝居だ。くらもち自身が演じるのだが、盛岡から常磐線でいわき市へ芝居の打ち合わせにゆく途中の原の町駅で、地震にあい、列車止まった。いわきまでのタクシー代が22000円、そこでいわきまでの連れを一人5000円で駅雨で募ったら、男ふたりと女性一人が応じて、そこに小学6年の女の子が紛れ込んできた・・、道路が分断され、迂回を重ねた通常の倍以上の道中での職種バラバラの人たち、いわきの合コンにゆく男とか、予備校の営業で行く男とか、色々話が弾んだり、合コン男が、女性に一目ぼれしてしまう珍事もあり、つまりは絆ができてゆく道中の話の外で、それぞれ折りたたみ椅子ひとつが座席の舞台に太宰治の走れメロス」のメロスを畑澤が演じて、必死に走っている・・。両者の併行でいわき市にやっと着く・・、父が迎えに来るという謎めいた少女は消え、合コン男の求婚を女性は避けて解散・・、盛岡に帰ったくらもちは妻子にこの体験の絆の深まりが楽しかったと話し、その話が必死に走る畑澤メロスの姿と重なり、震災の実相をうかがうことができる舞台だった。くらもちの盛岡、畑澤の青森は震災の実害は受けなかった。だが、同じ東北の演劇人としてなにができるかという課題から立ち上げた芝居なのだ・・。
▲小鷹信光のダシール・ハメット「マルタの鷹」(ハヤカワ文庫)の改訳決定版を読んだ。ハードボイルド文学研究・翻訳の日本での第一人者の小鷹が、東大の準教授諏訪部浩一の「マルタの鷹」講義を2年間受け、この優秀な若手研究者の成果を取り入れた改訳したのだ。わたしはハメット、チャンドラー、ジョン・ロスのアメリカ西海岸のハードボイルド小説の愛読者だが、なかでも小鷹訳の「マルタの鷹」は、ジョン・ヒューストン監督で探偵サム・スペードをハンフリー・ボガードが演じた名作絵映画の影響もあるが、この小説が記念碑的傑作だと思っている。改訂決定版は、さらにこの小説の深まりを、行く手を阻む、金や女の誘惑をはねのけてゆくサム・スペードの格好良さを味わった。
宝石だけで創られた鷹の彫像・・。だが、清水俊二訳で楽しんだチャンドラーをテキストをはしょらないで重厚に訳した村上春樹訳が、どうも初手の面白さに欠けるような気がするのと同じ感想ももったのも事実、完璧というのはどうも、という勝手な感想で・・。

by engekibukuro | 2012-11-12 10:48 | Comments(0)  

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