12月4日(火)★M-シアタートラム★★S-パルコ劇場

★「TOPDOG/UNDERDOG」(作:スーザン=ロリ・パークス、翻訳・演出:小川絵梨子、シス・カンパニー)。千葉哲也と堤真一が黒人の兄弟を演じる二人芝居。作者のスーザン=ロリ・パ-クスはアフリカ系女性黒人劇作家。この作品でピューリッツアー賞(戯曲部門)を受賞したそうだ。パンフでの喜志雅之の解説でいうとおり、アメリカ演劇は娯楽性以上に、アメリカの実像と人々の姿を探求する、アメリカを映し出す優れたメデイアであることを、如実に感じさせた舞台だった。なにしろこの兄弟の名前がヘンだ。兄の名はリンカ-ン、弟はブース、これは偉大な大統領と暗殺者の名だ。これは父親が「冗談で」つけたものだ。兄は弟のぼろアパートに転がり込んできたようだ・・、カード賭博のデイーラーで稼いでいたが、ヤバイのでやめて、今は顔を白く塗って、実名とあったリンカ-ンの暗殺事件の公園のアトラクションに出ているのが収入源だ。弟は定職をもたず、兄と同じデイーラーを目指しているが、万引きの常習犯で、女を追いかけるのに夢中だ・・。両親は離婚して二人は小さいときから一緒に生き延びてきた。父親は浮気相手との情事に兄を連れてきて、セックス場面を見せて、その相手が父が寝ている間に兄とセックスをしたり、母親も浮気して弟にその現場をみせたりと、凄まじい環境で育ってきた。それでも二人は最底辺で仲良く生き延びてきたが、仕事も女もダメになって追い詰められてきて、弟は女に裏切られて射殺してしまい、兄をもなけなしの最後のプライドを傷つけられ射殺しえつぃまう・・、その上、母がいざとうとき使えといったストッキングの中の500ドルはほんのはした金だった。猥雑な台詞、そこしれない荒廃感、カード賭博の凄まじい面白さ、女性作家とは思えないリアルな世界の活写で息をのむような芝居だが、千葉と堤は顔を黒く塗ったりしない・・。ことさら黒人であることを意識させないことが、この芝居が黒人だからこその悲劇ということを超えた、普遍性をもたらしたのだ。小川の演出のテキストを読む正確さとその表出が、千葉と堤というベテラン俳優のサポートを得て見事な舞台を創りえた。そして、この観ていても心が凍るような芝居が、かえって浄化作用に反転するという演劇の偉大な効用性をもたらしたのだ。
★★「恋と音楽」(作:鈴木聡、演出:河原晶彦、音楽:佐山雅弘)。稲垣吾郎主演のミュージカル。稲垣が演じる売れっ子作曲家が、新作の主人公の配役に悩み、それが昂じて幻の女性を妄想しだし、周囲を困惑させるという話で、稲垣を中心に真飛聖、大和田美帆、菅原永二、浅野和之が出演するコンパクトで切れのよいミュージカルだった。歌はもちろんだが、演技に定評がある稲垣の主演は舞台を弾ませ、浅野が中年プロデューサー役でおどろくほど達者な歌とダンスを披露し、舞台を締めた。昼に重い芝居を観たので、この舞台でリラックスできて嬉しかった。
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by engekibukuro | 2012-12-05 10:35 | Comments(0)  

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