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12月15日(土)M「竹田恵子オペラひとりっ切りvol8&9」

 今回のレパートリーは宮沢賢治「水仙月の四日」、古典落語「芝浜」、そして小熊秀雄「めおとうし」(台本・作曲:高橋悠治、うた:竹田恵子、ピアノ:高橋悠治、ヴァイオリン:古澤巌、チェロ:大藤桂子、演出:恵川智美)、渋谷区文化総合センター大和田・伝承ホール。
 ”悠治さんの音楽は、私の慣れ親しんだ「物語る音楽」とは、まるで違った方向からやってくる・・”と竹田はパンフで書いている。真っ白なスーツ姿で登場する「水仙月の四日」、”ぱちっ、雪堂子(ゆきわらす)の革むちが鳴りました。狼(おいの)どもは一ぺんにはねあがりました。雪堂子は顔いろも蒼ざめ、唇も結ばれ、帽子も飛んで・・”この雪堂子のメルヘンは、いつもの竹田のうたののびやかさと少しちがうなとおもう・・”私は、悠治さんの音楽に向うとき、特に緊張していると思う”と書いていることが、その感じでちょっと戸惑う・・。が、「芝浜」の高座での語りとうたで、がらっととんでもないような別世界に連れていかれる・・。なにしろ、この落語の下座音曲(?)が、高橋のピアノ、古澤のヴァイオリン、大藤のチェロだから、刺身にバターを塗ったようなものだと思いこみがちだが、これはこれ、落語の日本的なアクを丁寧に取り払い、生活感を精選しつくした澄明な上澄みだけの落語だというべきか、それがこのクマさんとおかみさんのお馴染みの話も、そのかお互いの好き具合(夫婦愛かな)もとても気持ちよく伝わってきて、これは生きていたら談志も蒼ざめたかもしれない大傑作だろう・・・。そしてそれは「めおとうし」に繋がるのだ・・。これは仲の良いめおとうしが、トサツ場につれていかれ、最後は祭り太鼓の皮になり、それも破れてついに昇天するし物語りだが、それまでのいろんな詳細が語られ、めおとうしにとって、殺されるとか死ぬとかがどういうことかさっぱり解からない、その疑問がめおとうしの体に実際にはどんどん実現してしまうという、ブラックユーモアが充満した、人間もたじたじとなる話を、竹田が高橋のピアノ伴奏とともに語り、歌う・・。これも素晴らしレパートリーで、今回の「オペラひとりっ切り」は大成功だった・・。

by engekibukuro | 2012-12-16 08:42 | Comments(0)  

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