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3月8日(金)★M「錬肉工房」★★S「北九州芸術劇場」

★「オイデイプス」(作 ソポクレス/高柳誠、構成・演出:岡本章、音楽:細川俊夫、舞台美術:島次郎、上野ストアハウス)。
 前作「バッカイ」に続くギリシャ悲劇上演、「現代能楽集」シリーズ、第12作、出演:桜間金記(能楽)、田中純(糸あやつり人形)、笛田宇一郎(現代演劇)、鵜澤久(能楽)、塩田雪(糸あやつり人形)、岡本章(現代演劇)、北畑麻実。地の底からの発語の断片のような声が暗い舞台からきこえてきて、詩人高柳のオイデイプスに依拠したテクストがそれぞれんの演者によって荘重に語られてゆく・・、うずくまり、ゆっくりした歩調の動きが、荘重な声音とともにオイデイプスの悲劇のトーンが醸成されてゆく、、それぞれの分野の演技の特徴が織り混ざったアンサンブルは見事なものだが、特に田中純がオイデイプスの人形をあやつって、自らの詩行の朗唱と人形の操作の一体感が目を見張るようなもので、朗唱が限度をしらず高揚しても、冷徹に操られた人形の激しくスタテイクなあったずまいで抑制されて、悲劇性が深まってゆく、さらに能楽の桜間の羊飼いとの決定的な会話は自分が徹底的な窮地への究明の悲劇性にとりつかれたオイデイプスが浮き彫りになる。桜間の語調が、この悲劇の決定的な語りだが、その感情の最高の重大事としりながら抑制された声調の世界への広がりは、古典芸能の練達者の力をまざまざと示したのだ。高柳は原作にはない星辰的イメージを導入し、同時に夢幻能の結構をとりこんだという、このことがオイデイプスの世界の、人間の根源的な悲劇性を強調するものか、やわらげたのか・・。観る側の内的葛藤を刺激するものだが・・。効果的で美しい細川の音楽、砂をまいた島の美術の印象的な簡素さ、それらが渾然一体となったハイレベルの岡本の芸術的達成のひとつの到達点だと思う。ただ、言葉の原初の発生を探る、”あ”などの言葉の断片を並べてゆく、岡本のナイーブだがユニークで魅力的な作業がうすくなっていて、それがなつかしいだけにちょっとざんねん・・。
★★「LAND→SCAPE 海を眺望著→海を展望」(作・演出:藤田貴大、プロデューサー:能祖将夫、あうるすぽっと)、北九州芸術劇場のプロデュースのシステムで、北九州小に藤田が50日滞在して、現地の役者をオーデイションし、戯曲を書き、演出した作品。小倉の町に住み、また出てゆく人々の悲喜こもごもの暮らしを、些細な断片を繰り返して、映像、音楽とともに盛り上げてゆくパフォーマンスアーツ、さらに藤田独特の舞台中央で演じる演技者を両脇の椅子にすわって仲間の演技を見ている異化の構造もあって、藤田の豊かな感性が充満したセンスが全面的にみなぎって、躍動する若い男女のとくに女性の役者たちの生命力がまぶしい舞台だった・・。

by engekibukuro | 2013-03-09 09:13 | Comments(0)  

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