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3月10日(日)★M:みつわ会★★S:KAAT×地点

久保田万太郎作品其の二十三「雨空」+「三のお酉」(演出:大場正昭)、六行会ホール。
 「雨空」は大正期の初期作品、「三の酉」は昭和31年の作品。「雨空」は浅草の指物職人が、町内の姉妹の姉にほれ込み、姉もそれをうけいれていいたのに、夫を亡くした家の事情からだろう、母親が金持ちの家に嫁がせてしまう・・。失意の職人幸三に妹のおきくは同情し。それが恋心にかわりはじめ、幸三も気がつきはじめたときに、こんどもおきくの嫁入り話がまとまり、親兄弟もない天涯孤独の幸三は、おきくに針箱をつくってやって、上方に旅立つ・・。体も調子が悪く、布団がしいてある茶箪笥と火鉢があるだけの部屋で、おきくと留守を頼まれた旅役者の長平の会話で様子が分かり、長さんが出て行っあたとに幸三が裏から入ってくる・・、心ならずも泣き崩れるおきくの話を上方に去る幸三は心みだれを隠して応対する・・折から雨が・・、この幸三を演じる菅野菜保之が絶品、少々若ずくりだが、それが返って芝居味を増して万太郎の芝居を演じて、菅野はいま第一人者だろう・・。
「三の酉」は夜の公園が舞台、もう五十に手がとどきそうな浅利香津代の芸者おさわと、おさわのご贔屓の歌舞伎も絵にもくわしいらしい中野誠也の初老の男との会話劇、男は昼間おさわが顔より大きいマスクをした男と三の酉の街を歩いていたのをからかいながら難ずるのだが、おさわは関東大震災で両親兄弟を亡くした、その想い出に三の酉に欠かさず出かける・・。中身は濃いとしてもなんでもない会話を、浅利はみつわ会の常連だが、初めてこの会で観る中野がとてもよいのに驚く、俳優座の代表的な俳優だから上手いのは当然だが、こんなに万太郎の世界にすっぽりはまるとは・・。会話の語調がまったく万太郎風味で、昭和の東京の男のたたずまい、この芝居は中野の芝居に堪能したのだった・・。
★★「駆込ミ訴へ」(原作:太宰治、演出・構成=三浦基)これは地点語をラップに転調させた傑作だ・・・が、原作を大昔に読んだままなので、読み返してから書くことにする・・。

by engekibukuro | 2013-03-11 10:17 | Comments(0)  

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