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5月22日(水)M「風撃ち」(作:サジキドウジ、演出:東憲司)

美術:塵芥、劇団桟敷童子、すみだパークスタジオ。

 東憲司は昨年数々の演劇賞を受賞し、東主宰の劇団桟敷童子の評価も上がってホンモノの人気劇団になってきた・・、東は他のカンパニーへも脚本、演出での仕事も多いが、この劇団の本拠地すみだパークスタジオでの思いっきり舞台を飾る芝居が真骨頂だ・・。
 この芝居は、明治初期、国が日本人の戸籍を整備して国家を確立しつつあったとき、絶海の孤島に例えば山野の奥で隠れて暮らすサンカのような戸籍をもたない非定住民カリドが住んでいた。このカリドにはヤマトの天災飢饉・普請工事・厄払いのため神に捧げる人身御供のための童達を育てる風習があった・・。童達は、自分がヒトミ(人身)になって、そのあと虹の上に登り、おいしいおいしい飴をなめる自分の運命を夢見るように信じていた。この孤島にヤマトから、人口調査をして戸籍をつくりヤマトの正しい住民にするため、日清戦争に参戦した戦友3人が島に派遣される・・、この島で500年生きてきたカリドの風習や掟などに3人は迷宮に入ったように翻弄され消耗してゆく・・、東の主軸の伝奇的なロマンと底辺の人々の暮らしを結ぶ劇世界は、ここでは伝奇的ファンタジーの世界がおどろおどろしく展開して、島の神秘に客を導入してゆく・・。ある日、天然痘の死者の骨をのせた怪しい船が漂着して・・。なにより凄いのは、このスタジオでの毎回のことではあるが、塵芥の美術、演技空間があるのかと思うほど舞台は丸太材で覆われて、この丸太材の林立のレイアウトの隙間からどう人物達が出没するか、そのスペクタクルがこの芝居の骨頂だった・。芝居の内容の東を美術の塵芥が凌駕すると錯覚させるような、インスタレーション、一点の見事なアート作品だった。

by engekibukuro | 2013-05-23 08:13 | Comments(0)  

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