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8月2日(金)M「海のホタル」

作:大竹野正典、構成・演出:シライケケイタ、プロデューサー:綿貫凛、オフイスコットーネアナザー公演、Performing Gallery&Cafe絵空箱。
 海水浴中の事故で48歳の若さで世を去った大坂の劇作家大竹野の作品だ・・。長崎・佐賀での連続保険金殺人事件(99年)を題材にした芝居、夫の浮気や冷遇などにいやけさした妻につけこみ誘惑して、ついには夫と子供の保険金目当ての殺人までさせてしまう古美術商と自称する男とその妻の事件までの顛末を、狭いカフェの中央にブリッジ式の舞台を設え、店のカンウンターも使っての臨場感溢れる芝居だった・・。妻は俳優座の清水直子、男は福士恵二、新劇の俳優座の清水と寺山修司の元天井桟敷出身の福士の組み合わせ、こういう異色のキャステイングができるんのが、綿貫プロデユーサーの才腕だ・・、この試みが見事に成功して、大竹野の脚本もよくできているが、凄まじい迫力満点の芝居ができあがった、人間の壊れ方のプロセスが清水の演技で目の前で進行して、福士のもともとの悪の権化ぶりが目を覆いたくなるような迫力で、二人のこれも凄まじいセックスシーンもあって、狭い会場だから芝居というより、実際の事件を目撃しているような臨場感だ・・。この過剰な刺激が演劇作品としてはと思う人はいるかもしれない・・・。昔、ロッセリーニやデ・シーカのイタリアンリアリズムの映画について、”不幸な現実は二ついらない”と言ったある批評家の言葉を思い出したりもした・・。しかし、そういうことも含めて色々考えさせる刺激的な面白い舞台だった。
▲「テアトロ」8月号の「戦争と演劇」特集が読み応えだあった。山本健一の福田善之「長い墓標の列」と木下順二「風浪」を論じたもの、石澤秀二の田中千禾夫の「雲の涯」や「マリアの首」を取り上げた文章が印象に強く残った・・。それと菅孝行の演劇への公的助成金を審議する各種委員会のメンバーの全員の演劇関係の前歴をいちいち調べ、危惧を表明した文章が有益というより、驚いた。こういう人たちが今の演劇界の重要なポジションにいるんのかと、はなはだ興味深かった・・。

by engekibukuro | 2013-08-03 09:57 | Comments(0)  

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