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1月29日(水)M映画「エレニの帰郷」新宿バルト9

▲新作の撮影中の事故で亡くなったギリシャのテオ・アンゲロプロスの監督の遺作「エレニの帰郷」を見た。アンゲロプロスの「旅芸人の記録」はわたしの生涯最高の映画だ・・・。日本に来た作品はほとんど見ている。こんごろたまに映画をみても、あまり感興がわかず、やはり芝居のほうが・・などと思っていたが、アンゲロプロスの映画は違った・・・。混迷をきわめたギリシャ現代史を叙事詩的に描く映画作家というのがアンゲロプロスの定評だが、それはまったくそうで、小国ギリシャの現代史が20世紀そのものの歴史を体感させる映画群なのだ・・。だが、アンゲロプロスの映画の最大の魅力は画面のマチエール、1画面々の質がおおきなテーマにせりあがってゆく・・・、この「エレニの帰郷」は、ギリシャでの政治活動により旧ソ連に逃亡し、そこでシベリアで収容されたエレニという女性の、彼女に恋する二人の男とのソ連、ドイツ、アメリカ、カナダとへめぐる物語で、この3人の物語にエレニの息子の映画監督と孫の少女エレニがかからみ、時、場所が変幻自在してそれを追うのは大変だが、1画面、1画面をナメルように見ていく(実際ナメ欲をそそるのだ)うちに、この映画が20世紀そのものを描いていること、パンフで蓮実重彦が「二十世紀の黎明と終焉とをこれほど的確に描いた映画作家はいない」と書いている。主力の俳優が素晴らしい、エレニのイレーヌ・ジャコブ、監督Aのウイレム・デフォー、カリスマ的名優、ブルーノ・ガンツ、ミシェル・ピッコリ、20世紀の歴史に翻弄されて生き、死んだ人々の物語は悲劇的にもかかわらず、わくわくすろほど面白い、それは20世紀に発明された映画そのものの面白さの真髄をアンゲロプロスが通暁しているから・・。私の戦前特高に弾圧され、戦後共産党の幹部になった叔父が、亡くなるまぎわに”モリオちゃん、20世紀は面白かったよ”といった言葉を思い出した、信奉していたソ連が崩壊する前に亡くなったのが幸せだったが・・。オレはもう20世紀の遺物かな・・・。最後に年老いた恋の片割れが運河に投身し、エレニも病いに倒れる、そしてラスト、もうひとりの年老いた恋の片割れと孫のエレニ、このラストシーンの素晴らしさ!わかりやすい映画ではないし、こちらの思い込みが強いが・・・・・・・・・必見か・・・。

by engekibukuro | 2014-01-30 07:15 | Comments(0)  

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