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7月16日(水)★M-風姿花伝★★S-花園神社野外劇

★「ボビー・フイッシャー、はパサデナに住んでいる」(作:ラーシュ・ノレーン、演出:上村聡史、翻訳:富永由美、シアター風姿花伝プロデュース)。
 この芝居、劇場オーナー・プロデューサーの那須佐代子が言うとおりの”小空間だから可能な濃密な演劇体験を”を十分以上にできた近頃希有の体験だった・・。作者はヨーロッパではオニール、ブレヒトに匹敵する劇作家として作品を数々今も上演されているスウエーデンの劇作家だ。この作家の作品は、スウエーデンに留学した女優富永由美が翻訳して、彼女が所属していた早稲田小劇場の流れをくむ旧真空鑑という演劇集団で上演された。「殺す勇気」と「悪魔たち」だ・・、なおこの2作は今回の作品と一緒に「悪魔たち」というタイトルで晩成書房から出版されている。私は上記2作を観ているが、もう迫力はあるが、ただたtだ暗いだけの印象で、これは北欧の風土からきたものだとしか考えなかった・・。しかし、今回も演出の上村が書いているが、”台本の表層だけを追うとただの不快感しか残らない”懸念がうなずける作品だ。登場人物は両親姉弟の4人、約2時間半のその4人の会話劇だ・・。父は小さな会社の社長で、妻とはなんとなくぎくしゃくしている、娘はアルコール依存症で結婚して娘を赤子のとき亡くし夫婦は破局、、息子は統合失調症の予後状態で突然暴発する・・。母はこのなりゆきにただ追随するばかり、母を増子倭文江、娘を那須佐代子、息子を前田一世、父を中嶋しゅうが演じた。尾の作品を”高度の福祉国家における中産階級の家庭の崩壊を描いている”と概括するのは一応の糸口だが、それより崩壊のマチエール、それぞれの役の演技の質をたどり、この芝居の核心へのプセセスに役者と同伴すること、この4人の役者が役に向かっての構えがまずただらない、とくに劇的なデスペレートな言葉が乱舞するのでない日常の家族の会話の緩急の波動が徐々に昂進して、真夜中に娘はワインをがぶ飲みして父親に黒いスリップ姿で食って掛かる、それを演じる那須はまさに鬼気迫る演技で、劇中のひとつのクライマックスだが、それに応ずる増子、中嶋の演技も高質な演技で、つらい日々を送る自らの運命に殉じざるを得ない感情が伝わってくる・・。特に中嶋の演技は、言葉の純度をひとつも損なわないまさにいぶし銀の演技だ・・。この演技陣にいって、この芝居が家庭の崩壊ではあるが、表面は否定的なののしりあいのように見えて、お互いに依存の絆は融けず、むしろ家族という人間にとっての最後の希求を呼び起こすのだ。再生とうよりもっと奥深いもの、それを感じさせたのが役者の演技だったということ、演劇による治癒のサンプルともいうべき舞台だった。
★★「廃墟の鯨」(作・演出:東憲司、椿組)
 夏恒例の椿組ー花園神社境内特設ステージ29年目の公演。東ワールドのひとつ、敗戦直後の九州の港町の街娼と、それを食い物にする進駐軍がからむヤクザの抗争を総勢40人の役者が登場する大活劇、こ
の芝居で満州帰りの女傑を演じた松本紀保が昨年劇団チョコレートケーキ「治天の君」で高い評価を受けたが、この舞台も独特の存在感で光彩を放っていた。

by engekibukuro | 2014-07-17 09:30 | Comments(0)  

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