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8月9日(土)M「ロミオとジュリエット」演出:蜷川幸雄

作:W・シェイクスピア、翻訳:松岡和子、演出補:井上尊晶、彩の国さいたま芸術劇場小ホール
 「彩の国シェイクスピア・シリーズ」内のシリーズ「オールメール・シリーズ」として全員男性の「ロミオとジュリエット」だ。蜷川の4度目の演出。ロミオが菅田将暉、ジュリエットが月川悠貴、モンタギュー、キャヤビュレット両家の若者たちが矢野聖人,若葉竜也、平埜生成、菊田大輔・・。谷底を除くような傾斜階段の客席から、アクテイングエリアを見下ろし、一番下の席はエリアと地続きで、客席の上方の回廊も存分に使った装置が一切なしの裸舞台。ここでモンタギュー家とキャビュレット家の若者の抗争を背景のあまりにも名高い恋物語が展開されるのだが、この舞台は、多かれ少なかれみな持っている定番悲劇の常識は崩される・・、今回の舞台は、花の都ヴェローナは終始不穏ななまなましい空気がみなぎっていて、ここで起こった禍々しい事件を終始目撃しているような臨場感に包まれるのだ・・。なにやらえたいのしれない狂おしい状況下の事件で、この恋物語がヴェローナの長年の宿痾の犠牲の物語であることがヴィヴィッドに伝わってきたのだ・・。このような舞台を醸成した役者陣が蜷川演出の沸き起こって導線を体現して舞台の緊迫感を盛り上げる・・。菅田のロミオ、月川のジュリエットは看板を捨てた熱い演技で、とくに菅田はこの舞台を見事に背負って立った。これも周りのヴェテラン役者がそろっての助力の成果っで、特にロレンス神父の原康義が出色、それと岡田正の乳母、この乳母役、パンフの扇田昭彦の解説で、蜷川が日生劇場での1974年の初めての商業演劇演出の「ロミオ・・」では山谷初男の女役の乳母、、1998年はこの乳母役は片桐はいり、扇田解説では蜷川は”乳母役には趣向を凝らしている”と・・。その趣向が籍年の蜷川門下の岡田で全開して、この乳母役の重要度が浮き彫りにされ忘れがたい演技で、今までで私が観た乳母役で最高だ・・。ヴェローナの更新が目指された最後に階段上に一人の兵士が登場して劇場全域を銃撃する・その轟音で幕・・。この忌まわしい時代に、世界を吹き飛ばす願望と悪夢を実現できるのは舞台だけだと言わんばかりの銃撃轟音は、この芝居を見事に始末をつけた・・。

by engekibukuro | 2014-08-10 10:04 | Comments(0)  

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