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11月10日★M紀伊国屋サザンT★★S紀伊国屋H

★「ブロードウエイから45秒」(作:ニール・サイモン、訳:小田島恒志・小田島則子、演出:堤泰之)加藤健一事務所。
 ブロードウエイから至近距離のカフェが舞台、このカフェはブロードウエイの舞台関係のプロデヂューサー、演出家、役者などがランチやお茶にやってくる界隈の有名店で、店主夫婦はまたブロードウエイにい地方からやってくる俳優志願の若い男女の写真を壁に張って、陰ながら応援もする名物夫婦だ・・。もっとも頻繁にやってくるのはこの芝居の主人公、加藤健一扮する人気スタンダップ・コメデイアンのミッキー・フォックス、このミッキーを中心にブロードウエイに関わるさまざまな人たちの哀歓を描く、いかにもニール・サイモンらしい面白い作品で、小田島夫婦の苦心の訳も”聴きもの”で、加藤の芝居もたっぷり楽しめる。中でも、この店にやってくる高齢夫婦、妻は超ハデハデのコートをまとい、夫はボケボケで妻が世話でかかりっきり、この夫婦、実はこの芝居のカギをにぎる男女で、ラストはボケが男女が逆転して、このカフェを救う・・・。この夫婦を演じる俳優座の中村たつと滝田裕介が素晴らしい。さすが、新劇育ちの翻訳劇の王道を歩んできた俳優の底力をみせた。感動した。
★★「儚みのしつらえ」(作・演出:中津留章仁)トラッシュマスターズ
 トラッシュマスターズの紀伊国屋進出の中津留の野心作、戦争と平和を問い、男女の赤裸々の愛憎を描きつくす迫力編で、しかもこの芝居の内容と直結しずらいこのタイトル「儚(はかな)みのしつらえ」。トップシーンは戦場、この戦争の二人の敗残兵と女性救護員、この女性を二人の兵が奪い合う、この戦争、日本と日本人のものなのか不明な国籍不明、この戦場シーンが時がたっての平和の時代にも後をひく・・。この兵隊の一人の妻と息子が、時がたって登場、父は生死不明のままで、妻は新聞記者と愛しあっていて、妻の妹も、三角関係のはざまで苦悩する建築プランナー。妻はもう夫は戦場で死んだと断定して、愛人と暮らす決意をして息子にも説得して、息子は父が帰ってきたら別れるという条件で許すが、そうしたとたんに父帰還の知らせがきて、しかもこの元兵士が我が家にもどってきたときに、家の前の車の中で妻が愛人とキスしている現場を目撃する。ほかに露骨なセックスシーンもあっての中津留ワールド、芝居だからのぎりぎりのご都合主義の展開、一言居士風のさまざまな断定、よくわからない戦争状態への準備など、日本のリアリズム演劇、ひいては小劇場でも目にしない演劇世界は、どんなシニカルな見方も押しつぶしてしまう強度があるのだ。いままでの演劇にまつわる知的、藝術的粉飾の無力をさらしだしたと感じさせる。これは今の日本の状況に根差した、新しいプリミテイブ演劇、この演劇のプリミテイブな強度が果たして、内実がいかなるものか、きちんと考えることあらゆる意味で刺激的な舞台だった。

by engekibukuro | 2014-11-11 11:19 | Comments(0)  

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