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1月28日(水)


・「佐藤優の実践ゼミ」(文藝春2月臨時増刊号)
 佐藤の文章はデビュー作「国家の罠ー外務省のラスプーチンと呼ばれて」を読んで以来読んできたが、こんなに論壇の寵児になるとは・・・。いままでのインテリと呼ばれた人種と違って、週刊誌の身の上相談から、難しい神学の本までその範囲の広大さと緻密さ、かって外務省のノンキャリアの役人で、旧ソ連が瓦解する時のモスクワ勤務、さらに鈴木宗男事件に連座させられ、東京拘置所に513日間拘禁されるという特異な体験、その体験についての著書から職業作家に見事に転身、著書はことごとく売れて、いまは新宿曙橋に四階建の建物に住み、膨大な書庫はここでも足りず、箱根に別宅がある・・。なにしろ月に300冊の本を読み、世界の情報を集める。15歳の一人でソ連圏だった東欧旅行したというの凄いし、その時の記憶、いやこの人の記憶力はメモなどとらずに実に細かいことを覚えていて、5年前ぐらいに一緒に呑んだ相手の落としたグラスの中の氷の個数まで覚えている・・。この10年の佐藤の論考、対談を再編したこのムックを読むと、その官僚体験を踏まえた膨大な知識の詰まった、下世話な上司との付き合い方の指南から、ロシア正教についての論文までの著述は、なにより今を生きる現実感覚に支えられているからのこそのもの・・。ただ、かなり長いロシア勤務にかかわらず、音楽、バレエ、演劇など世界有数の舞台芸術の国なのに、そういう芸術を観たという記述はない。文学にも詳しく、映画も見るが、芝居などとは無縁らしい、ロシア文学もドストエフスキーは論じるが、チエホフはない・・。まあ、芝居まで詳しかったらかなわないから・・助かるが。

by engekibukuro | 2015-01-29 10:36 | Comments(0)  

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