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1月29日(木)S「悲しみよ、消えないでくれ」

作・演出:蓬竜太、モダンスイマーズ、東京芸術劇場シアターイ-スト
 舞台は山小屋、この日はこの小屋の長女が下山して土砂災害で死んだ日で、なじみの登山客、恋人だった小屋で同居していた小説家志望の男、手伝いの夫婦、次女がしのぶ会をしようと準備している・・。
 しかし、この小説家志望の男・忠男は実は・・・・・、この芝居では人物たちが狭間でd”下で”とか”下に”という言葉を頻発する・・。下とはむろん山の下の普通の生活をさすが、登山客にとっては山は下のさまざまな苦難や悩みを浄化する別世界だという臆断があり、山小屋に住む人間にとっては下で暮らすことが本来の人の暮らしあdという思いが強い、この区別をそれぞれが自分流に抱えながら、この小屋に住み、来る・・・。蓬莱は、この山の神聖視が現実逃避であり、下山願望が危ういものだということを実にスリリングに描いてゆく。長女のしのぶ会は、忠男が実は長女にひどいことをしていた、さらに人物たちのほとんどの惑乱の作動者だということを暴いててゆく・・、そのプロセス、人物描写の劇作術の冴えは蓬莱の劇作家とての才腕を如実に感じさせるものだった・・・・・。男ばかりのモダンスイマーズに次女梢を演じた生越千晴が参加しての舞台で、スイマーズの古山憲太郎以下の役者陣もこの蓬莱の快作に存分に力を発揮し、しかし、この芝居の最大の貢献者は山小屋の主の杉浦寛治を演じたでんでんだ・・・。自分の二人の娘、登山客らに慕われているにも拘わらず、山と下の狭間で生きるそれらの人間たちへの自分の思いが届かない初老の男の寂寥感が、羽目を外す藝質が返って効果的な演技で舞台を根のところで支えた・・。人物たちが下に降り、ひとり朴念と山を見ている姿はもうサマになっているとしかいいようがない。蓬莱・モダンスイマーズのかぎりなく上位に位置する芝居だろう・・・。

by engekibukuro | 2015-01-30 08:10 | Comments(0)  

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