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6月17日(火)S「敦ー山月記・名人伝」


原作:中島敦、構成・演出:野村萬斎、世田谷パブリックシアター

 2005年に野村萬斎が世田谷パブリックシアターに就任後初の構成・演出をした自らも主演した作品で、その年の「朝日舞台芸術賞・舞台芸術賞」、「紀伊国屋演劇賞・個人賞」を受賞した作品の再々演だ。
 舞台は、松井るみが設計した本舞台と橋掛かりを一体化し、橋掛かりがぐるぐる回るもので、上手に尺八の藤原道山、下手にには太鼓の亀井広忠が座る。萬斎は「山月記」では、優勝な官吏であったのに、それでは飽き足らず詩人として名声を博さんとするが、それが叶わず、ついに発狂して、あろうことか虎に変化してしまう李徴を演じ、「名人伝」では弓の名人紀昌、放たれた矢が天空の星々の間を通り抜けてしまうまでの名人技を達成せんとる超過酷な修行の数々を演じる・・。そして、両演目とも、要のシーンには、丸眼鏡をかけた三つ揃いの背広を着た3人の敦が出てくる。84歳の萬斎の父野村万作は、「名人伝」の弓の超絶名人甘蠅老師と老紀昌を演じて、いまだ矍鑠たる存在感を示し、舞台を締めた。自分の畑の狂言仕立てを動力にして、変幻自在のパフォーマンスを演じて、さらに敦の作品のイマジネーションを視覚化するべく、真鍋大度の工夫をこらした映像が目を奪って、萬斎の中島敦への並々ならぬ思慕と敬愛が如実に感じられる舞台だった。

by engekibukuro | 2015-06-17 07:33 | Comments(0)  

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