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7月30日(木)S「壊れた風景」名取事務所

作:別役実、演出:真鍋卓嗣、下北沢小劇場B1

 別役作品がきわめて現在アクチュアルであることが、この芝居で実感された舞台だった。舞台にはハイキングにきた家族の大きなパラソルの下で食事の用意が万端整なっている敷物の上の風景が明るくみえる。しかし、人の気配が全然しない、ただ、蓄音機のレコードが回転して音楽が虚空に鳴り響いているだけだ。そこに上手から新井純と森尾舞の母娘が道に迷って、自転車をおしながらやってきた。とうぜんこの無人の風景に気は付くのだが、二人とも無視するフリをし続けて、地図を眺めて細かい会話をし続けて、そこへ薬のセールスマンの吉野悠我があらわれて、この男も風景をちらちらみながら、これも地図に熱中するふり、さらにマラソン選手が現れて・・。みな、ワインやらコーヒーやら、ご馳走がやまほど用意されている無人の風景にホントは気を取られているのに、些末な会話に夢中になっている・・。さらに男女のカップルが現れて、とうとう少しずつつまみだし、最後には食べ放題に・・。ここまでの経過がが精密に精密に設計されrていて、最後には三谷昇の刑事が現れて、ハイキングにきた6人の家族が一家心中したことを告げられる。観終わったとき、この芝居との既視感みたいなものを強烈に感じた・・、そうか、この登場人物がほんとはご馳走にあり付きたいという単純な欲望なのに、もってまわった婉曲な迂回する会話を重ねる様子が、今のアメリカにより加担するという簡単な方針なのに、もってまわったわけのわからない言説を繰り返す安陪政権とそっくりなのだ。日本人の心性に根差した会話劇が、不条理劇といわれてきたが、この芝居をみて、いまの日本が不条理そのもので、まったく壊れた風景だということが実感されたのだ・・。しかも幸福そうなハイキングの風景が、暗い一家心中と直
しているのだ・・・。

by engekibukuro | 2015-07-31 09:26 | Comments(0)  

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