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9月8日(火)椹木野衣×会田誠「戦争画とニッポン」

講談社

 気鋭の現代日本美術の実作者のトップランナーの会田と、美術ののみならず最先端の音楽はじめアート全般を視野におさめていて、かつまた美術史全般に該博な知識をもつ美術評論家の椹木のニッポンの「戦争画」につての対談だ。藤田貴大の「cocoon」の原作漫画を描いた今日マチ子が、この本を推奨していたが、図版がたっぷり入った読み応えたっぷりの面白い本だった。先の大戦での戦争画はさまざまな絵描きが描いているが、その画家群のリーダーは藤田嗣治だったが、戦後米軍に捕獲された戦時の戦争画は、あとに永久貸与の形で国立近代美術館に収納されている。その展示を椹木ら美術批評家が強く要請して実現させた。そこで見た藤田の「アッツ島玉砕」という戦争画は、敵味方の区別がつかない死体の山で、戦意高揚どころではない圧倒的な迫力がみなぎる作品だった。真の芸術家は戦時の軍の時事的要請など超えてしまうし、軍も文句が言えないものだ・・。戦後は会田の名高い「紐育空爆之図」の入った連作「戦争画RETURNS」を発表し
 している。二人は戦争画のみならず、国家と芸術家の関係について、東西の美術史を踏まえて実作者と批評家のそれそれので立場で一筋縄でゆかない複雑で充実した対談で、西洋絵画の本流は「戦争画」だということを初めて知った。

by engekibukuro | 2015-09-09 07:15 | Comments(0)  

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