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10月17日(土)M「ミュージカル・パッション」新国立劇場

作曲・作詞:ステイーブン・ソンドハイム、翻訳:渡辺千鶴、訳詞:滝真知子、音楽監督:島健 演出:宮田慶子
”19世紀のイタリア、ミラノ。騎兵隊の兵士ジョルジオは、美しい人妻のクララとの情熱的な逢瀬に夢中になっている。しかし、ほどなくして、彼は、辺鄙な田舎への転勤を命じられ、その地で上官リッチ大佐の従妹フォスカに出会う。病に冒されているフォスカは、ジョルジオを一目見て恋に落ち、執拗なまでに彼を追いかけるようになる。クララへの愛に忠誠を誓い、フォスカの愛を受け入れないばかりか、冷たくあしらうジョリジオだったが、やがて・・・”というのが粗筋だが、さらにフォスカには男を惹きつける容貌に恵まれず、それも大きなハンデで・・。このミュージカルは映画「パッション・ダモーレ」をベースにしているが、その元はイタリアの作家、イジニオ・ウーゴ・タルケッテイの小説「フォスカ Fosca」に拠る。これをミュージカルにしたソンドハイムは”敢えてミュージカルに相応しくない題材に挑み、表現の可能性を追求してきた。楽曲の創作術もユニーク極まりない。まず脚本を読みこむと、登場人物の心の内を深層心理まで徹底的に分析を重ね、それを歌詞とメロデイに余すことなく描き、故に、ストーリー進行とキャラクターの感情が完璧にリンクしているのだ”(パンフ:中島薫)。この不幸な愛を強引に推し進めるフォスカを演じるのが、シルビア・ブラブ、ジョルジオが井上芳雄。この見るからに陰気なフォスカをシルビアが、なんともいえない底力で演じ、歌い、その静かな迫力にジョルジオが最後には打ち負かされ、真実の愛に目覚める・・・という物語だと言っていいのだが、このフォスカの執拗な追いかけは現代ではストーカー行為だろう・・。そして、ソンドハイムが人間の愛の行動の幅を良識や法律で制御し、愛と犯罪性の狭間を簡単に腑分けする風潮を批判しているのだと思う。真実はつねに危険と背中合わせだし、真実性は幸福を保証しない。そういうミュージカルとしてはまことにユニークで、メロデイののものが、それらをすべて包含する心の底に響く美しさを秘めていた。この上演はシルビア・グラブの存在感の貢献がすべてだ・・。

by engekibukuro | 2015-10-18 08:13 | Comments(0)  

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