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12月18日(金)M「悲しみを聴く石」風姿花伝プロデュース

原作:アテイク・ラフミ、脚色:ジャン=ルネ・ルモワーヌ、翻訳:岩佐正一郎、演出:上村聡史
 シアター風姿花伝

 爆撃音がのべつ聞こえる中東の村、舞台を客席がコの字型に囲み、紗幕が舞台を三方から囲っている。紗幕をとおして舞台上の出来事と人物を観る仕組みになっている・・・。中央にベッドが置かれていて、寝ている男は、付き添う女のモノローグによれば、この彼女の夫は戦闘で味方の撃った弾を首にうけて意識を無くしたまま寝ている状態なのだ・・。彼女は子供を親戚にあずけて看病しているのだが、この夫のかたわらで、自分の夫との係わりを多分神に向かって告白し続ける、話は中東の結婚や性や出産に関する因襲のなかで迷い、悩み、夫への秘密をも乗り越えてゆく悲しみの渦だ・・・、その最中にも爆撃が続き、窓が吹き飛ばされる・・。そして若い兵士が入ってきて、彼女の体を求めるが、彼女は自分は娼婦だといって兵士を去らせる。
だが、兵士はまた来る、こんどは彼女は若い性に無知な兵士を導くのだ・・。そしてある瞬間に紗幕がおろされて、ベッドで寝ている男が前面にでてきて遠い中東の話が、男と女の普遍的な話の眺望が見えてきて、さらに彼女の哀しみを聴く石でもあった夫が意識を回復して置きだし、彼女に打つ・・・、聴く石は堪えられず砕け散るのだが、夫はさらに起き上がるのだ、逆に強打されて意識を失った彼女は・・。この女を那須佐代子が演じる。ほとんど独り芝居だが、素晴らしくできていた・・。ベッドに大半を寝たきりの夫を演じた中田顕史郎もその寝たきりの存在感が舞台を一方で支配していた・・。この舞台は中東の現在の戦乱、男女の性の深淵などの問題劇を昇華した、舞台劇としての美しさが現前していた。

by engekibukuro | 2015-12-19 09:45 | Comments(0)  

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