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3月3日(木)映画「ヘイトフル・エイト」

 クエンテイン・タランテイーノ監督の空前絶後の大傑作だ。
南北戦争終結後のアメリカ、猛吹雪のワイオミングの荒野に駅馬車が懸命に走っている。賞金稼ぎの黒人が同業者のこれは白人と、彼が捕えたお尋ね者の女が乗っているその駅馬車をヒッチハイクする。また道中、自称保安官も拾った。そして、彼らは道中の”ミリーの紳士洋品店”に避難する。そこにも怪しげな数人の先客がいた。そこから、最後には全員死んでしまう殺人劇が始まる。プロットは複雑極まりないが、同じ店内の室内劇で、だがけっして演劇的ではない空間が伸縮す映画の最高表現だ。それにここに出てくる俳優が凄い。話の大筋に、南北戦争の白人と黒人の人種問題が伏在していて、ここに出てくる賞金稼ぎの黒人ウオーレンは、信義の定かでないエイブラハム・リンカーンの手紙を持っている。人物それぞれの関係性を物語る絶妙な構成だが、ここにはアメリカそのものの本体が、アメリカ文化の華である映画によって描きつくされているような気持にさせられて、それが見事な3時間のエンターテイメントに極まっているのだ。女囚を演じるジェニファー・J・リーの演技が圧倒的で、これだけの映画を創るタランテイーノの才腕は・・もう賛辞はこれまでとして、とにかく長い間映画を見てきたが、これほどの一寸の隙のない充実しきった映画は初めてといえる。

by engekibukuro | 2016-03-04 09:08 | Comments(0)  

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