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3月24日(木)S「記念碑」名取事務所

名取事務所公演 現代カナダ演劇・最新作連続公演、下北沢「劇」」小劇場
作:コリーン・ワグナー、翻訳:吉原豊司、演出:小笠原響

 「人を殺すのが犯罪なんなら、どうしてつまで戦争を続けているんだ!」とこの芝居に登場する兵士は叫ぶ。人を一人殺しても罪になり、ところが百人殺しても罪に問われず、逆に英雄視されるのが戦争。この芝居は、20万人の死者と200万人の難民を出した、1990年代のボスニア・ヘルツコビナの紛争に材を得て、カナダの女流劇作家コーリン・ワグナーが1995年に書いた作品だ。強姦と殺人の罪で処刑用の椅子に座ったその兵士の、自分の犯した罪業の告白と、それについての強引な弁明のモノローグで舞台は始まり、それが一人の女性尋問官と連れだって、自分で犯し、殺した女たちを埋めた場所を掘り起こしにゆく場面に移行する。
兵士は鎖で拘束されているが、女性尋問官と二人きりで埋めた場所を探しにゆくのは、一つ間違えば尋問官に兵士が襲い掛かることが可能なシチエーションだ。この芝居は、そういう現実の行為よりも、女性訊問官の兵士への憎悪にもとずく命令と、それに対する兵士の反発と服従の連鎖の会話がポイントになってくる。この会話が、戦争と人間性に関わる通り一片の解釈や、判断に綻びが見えてくる、そのプロセス自体が、単なる反戦劇の域を超えてゆく・・。それを感じさせたのは、兵士を演じた寺十吾(ジツナシ サトル)のそういうこの芝居のコンセプトを言葉と身体のギリギリまで全身的に表現した演技、それに応じた女性尋問官を演じた森尾舞(モリオ マイ)の演技・・。とても充実した二人芝居だった。

by engekibukuro | 2016-03-25 10:51 | Comments(0)  

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