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4月15日(金)「夢宮殿」イスマイル・カタレ

村上光彦訳 東京創元社

 佐藤優が以前から推奨していた本をやっと読んだ。
このイスマイル・カタレという小説家は、アルバニアの作家、アルバニアという国は、ホッジャという独裁者が支配する共産主義国家で孤立した国家だというくらいの知識しかなかったが、この小説を読むと、その独特の国の雰囲気は伝わってくる。それに、この小説は、まるでカフカの小説を読んでいるような気になる。夢宮殿とは国民の夢を国家で管理する役所だ。役所にはそれぞれ、国民が申告する夢を写す筆生という役職があり、それを選別する<選別>という役職があり、さらにその上に<解釈>という役職がある。その他、いろいろ複雑な仕組みがあり、役所の建物は迷路の連なりで、主人公マルク・アレムという青年がこの宮殿にゆき、目当ての人間にあいにゆくまでの描写は、いくら歩いてもたどりつけないカフカの「城」のような迷宮のおようだ。国民の夢を吸い上げて、分析し解釈して、国家に対する不穏な兆候をチェックするという、荒唐無稽な話が、この小説ではリアリテイをもつ。それは朝になって霧散するにしても、夢のリアリテイはみている当事者にとってはは抗いがたい真実だということに由来している。この小説では、田舎の青物商の申告した夢の解釈で、皇帝が高官を死罪にするという事件が起こる。なんとも面白い小説だった。

by engekibukuro | 2016-04-16 09:32 | Comments(0)  

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