5月8日(日)

 ・シアターアーツ 2016春 60 特集 忘却の痕跡ー「戦後70年」を経て

 今号では坂口勝彦「ダンスという忘却 戦争とアジアの忘却」が面白く、有益だった。

 戦時中のモダンダンスの舞踊家、石井獏や江口隆哉・宮操子らが、従軍慰問舞踊をもって戦地に行ったことを初めて知った。軍では「所謂 芸術的な舞踊は、現地ではとても観賞する余裕がない。安易で朗らかでしかも内地色が濃い、軍国的なものでなくては不適当である」という軍の意向にそって、精力的に戦地を回ったそうだ。ほかに、ピナ・バウシュの日本への影響について、それがほとんど痕跡がないことへの論究もはじめて知ったことだった。
 そして結論の部分。
「ダンスの一回性の安易な称揚、日本のダンスに特有な戦争の忘却とその痕跡の忘却、西洋を見つめたはずが自己へと回帰してしまうナルシステイックな自己撞着等、日本のダンスがその根っこで抱えている問題は多い。ダンスは一回限りで消えていくが、その一回性を逆手にとって忘却にまかせては無責任だろう。忘却はほっておけばそこに何でも上書きされてしまい、何が忘却されているのかもわからなくなってしまうのだから」
私は坂口さんのダンス評論を前から愛読している。ダンスには全く不案内なのだが、坂口さんの批評の文体が素晴らしく中身が詰まっていて読ませてしまう評論なのだ。 
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by engekibukuro | 2016-05-09 06:59 | Comments(0)  

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