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5月19日(木)M「パーマ屋すみれ」作・演出:鄭義信

 新国立劇場

 「焼肉ドラゴン」、「たとえば野に咲く花のように」に続き、この作品で鄭義信の三部作の新国立劇場での再演は終わった。1965年、九州のアリラン峠という夕日の美しい町があった。この町では、日本人と朝鮮人が炭鉱で働いていて暮らしていた。舞台は、この町の理髪店。高山(高)須美(南果歩)の店だ。須美は高山(高ーコ)洪水(ホンギル)(青山達三)の次女で、長女の初美(根岸季衣)は飲み屋をやっている。三女は晴美(星野園実)。三人とも夫は炭鉱で働いていたが、須美の夫の張本(張ーチャン)成勲(ソンフン)(千葉哲也)と晴美の夫大杉昌平(森下能幸)は炭鉱事故でのCO患者(一酸化中毒患者)で、発作に苦しんでいる。初美の内縁の夫大村茂之(久保酎吉)は組合の役員だ。折しも石炭産業は衰退の一途をたどりつつあり、北朝鮮へ帰還する事業も始まっていた。そういう状況での、日々の哀歓がこの床屋でくり広げられ、最後にはちりじりになり、須美はいつかパーマ屋を開く夢をあきらめないで、アリラン峠にとどまるのだった。鄭義信(チョン・ウイシン)独特の、泣いたり笑ったりの忙しい芝居で、俳優たちも目いっぱい奮闘する舞台で、特に太った三女晴美を演じた星野園実が、夫がCO中毒で苦しみに耐えられず、死なせてくれという切願に思い余って応えてしまう妻を演じて、その哀切さは比類のないものだった。ただ、全体に感情の起伏の激しさを演じるのに急で、それが発生するコトガラが見えなくなるあやうさがあったと感じた。
 

by engekibukuro | 2016-05-20 10:46 | Comments(0)  

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