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5月20日(金)柄谷行人「憲法の無意識」岩波新書

 憲法九条は日本人の無意識にしっかり根付いている。と柄谷は書く。
これは憲法一条の象徴天皇という規定としっかり結びついている。
「明治憲法が自発的で、戦後憲法が自発的でないというのはバカげています。明治憲法は、べつに「国民」によってつくられたものではありません。憲法もない野蛮国では、対外的にやっていけない、不平等条約も変えられない、といった外的強制というより「皮相上滑り」の模倣という動機から作れたものです。しかも、この憲法を作ったのは、元老として権力を維持しようとした連中であって、彼らは議会創設に備え、軍を握るために天皇の統帥権を設定しました。そうした元老がいなくなったのちに、この統帥権条項が独り歩きし、昭和時代における軍部の独断専行の根拠になったのです。」
 アメリカに押し付けられたと憲法の象徴天皇制と九条の活計は、明治以前の徳川時代の日本人と天皇の関係に遡る、徳川時代には天皇は実権はなく、徳川の平和の世があった。さらに天皇が実権を持ったのは、後醍醐天皇の短い時期だけだった。要するに天皇制が力をもったのは、明治維新以後の期間だけで、戦後というのは徳川時代の日本、本来の日本にアマリカに強制されて戻ったのだ。
「私が考えているのは、憲法九条を日本の「原理」として再確定することであり、政府が対外的にはっきりと表明するすることです。これは、日本が歴史的にもつ唯一の普遍的原理です。何度もいうように、それが「強制」によることこそがその普遍性を証明するものです。たんにわれわれの意志が作ったものであるならば、いつでも廃棄されます。この憲法が「自主的」でないことこそ、重要なのです。もしそれを外来的なものとして斥けるならば、日本人はいずれすべてを失うでしょう」。柄谷の言う無意識(強制も)とは、フロイトの「超自我」に由来する。さらにカントの平和論など、私の理解が届かないところがたくさんある。再読、三読して理解するしかない。
しかし、画期的な憲法論を読んだという読後感は強烈だった。

by engekibukuro | 2016-05-21 10:14 | Comments(0)  

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