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7月12日(火)津島佑子「ジャッカ・ドフニ」

ー海の記憶の物語ー 集英社
 ルカニンカ フォー、ルカニンカ おれも
 ルカニンカ フォー、ルカニンカ 交易しようと
 ルカニンカ フォー、ルカニンカ 出かけて
 ルカニンカ フォー、ルカニンカ 行ったのだが、
 ルカニンカ フォー、ルカニンカ 悪いトノの通辞が
 ルカニンカ フォー、ルカニンカ 毒の入った酒を
 ルカニンカ フォー、ルカニンカ おれに呑ませて殺したので、
アイヌのカムイ・ユカラである。15世紀、アイヌ人とニホン人の間に生まれ、幼くして孤児となり、きりしたん一行と共にアマカウ(マカオ)へ航海の旅に出たチカ(チカラップ)の物語だ。きりしたん弾圧のニホンをきりしたんの、パードレを目指す少年ジュリアンとともに苦しい決死の旅をして、ついにマカウにたどり着き、そこでいっときは普通に暮らせたのだが、さらに当時のシナからのニホン人追放命令が出て、最後にはバタビヤにたどり着き、結婚したくさんの子供を産む・・。この小説はチカの物語と、若いころから北海道を旅する”わたし”、一人息子と網走など、北海道の北端を旅し、ゲンダースというサハリンの少数民族の男(日本名:北川源太郎)と交流し、その息子を事故で亡くす物語が混合した、15世紀のチカと、亡くした息子への鎮魂歌だ。柄谷行人が、この小説を、世界文学に列する作品だと評価しているのが、十二分にうなずける規模雄大で、そして見事に繊細な小説だった・・・。

  

by engekibukuro | 2016-07-13 10:11 | Comments(0)  

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