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9月30日(金)

 ・「文学界」10月号
 宮内悠介「カブールの園」と岸川真「坂に馬」が読み応えがあった。「カブールの園」は日系3世のIT技術者の女性の話。子供のころ豚の真似をさせられて、それがトラウマになって、今も精神科に通っている。休暇でマンザナの戦時中の日本人収容所に行く・・。自分の出自が日本人だが、言語は英語しかできない。この言葉と出自の国の言葉とのジレンマが今世界中の移民、難民の言葉の問題につながって、特にアメリカ西海岸のロスアンジェルスやサンフランシスコの風物の描写に、それが深みを与えていて、その寂寥感の深さが心を打った。
 「坂に馬」は朝日の片山杜秀の評を上げる。「「坂に馬」は台風パニック小説。現代の長崎が1982年級の大水害に再度見舞われる。人も荷物運搬用の馬も長崎の坂段(さかだん)を雨水と共に流れ下る。平時は一瞬で非常時に。気が付けばすがれるものがない。助かる道がない。世界がこれほど脆かったとは!残酷な細密描写が冴える。ある日突然、世界の底が抜ける真の恐ろしさが描けている。
すがれるものがどんどん霞んでゆく世界から目を背けず、先へ抜け出す想像力を巡らせなくては!油断して坂段を転げ落ちるのは御免だ」
・「銀漢」10月号の谷岡健彦「秋櫻子の足音」(10)での秋櫻子の遺句集「うたげ」の集中の谷岡さんが感銘を受けた一句。「手のひらのわずかな日さえ秋日和」。!
・医科歯科大で午後治療、おなかに注射を刺す。

by engekibukuro | 2016-10-01 07:33 | Comments(0)  

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