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1月7日(土)

・今月の朝日新聞の片山杜秀の文芸時評は、高村薫の単行本の「土の記」と新潮1月号の上田岳弘の「塔と重力」だった。高村の本は未読だが、上田の小説は読んだ。
”主人公の田辺は阪神・淡路大震災のとき高校生。宿泊先のホテルが崩れ、二日間生き埋めの末、救出されるた。が、同宿していた憧れの美希子は死ぬ。地震と死への恐怖。「理想の女性」の喪失。これらの経験が、東日本大震災後の東京都心で働く田辺の心を、今も蝕み続けている。そこに救い主のように現れるのが、大学時代の友人、水上。彼は田辺に土の揺らぐ不安から、逃れるための奇想天外のビジョンを与える。重力から脱出すればいい。SFk作家アーサー・クラークの宇宙エレベーターか、彫刻家ブランクーシの無限柱か。バベルの塔もびっくりの高さの塔を無重力圏にまで延ばしてそこに住めばいい。また水上は田辺にこうも教える。田辺の心に住む美希子とはもはや記憶と想像の織り成すイメージに過ぎず、同じイメージと重なる別の女性が居れば、それはイコール美希子なのだと。田辺は水上に洗脳される。水上が次から次へと紹介する女性に美希子をダブらせる。SNSあに過度に依存して、自らを電脳空間内に住む肉体なき意識、高みの塔に住む神のごときものと思い込もうとする。(後略)”以上の片山の要約にびっくりした。。そういう小説だったのかと・・。ただ、SNSに過度に依存する生活とはどういうものかということは、SNSに無縁の私には、現代社会にもう無縁な生活をしてるなと率直に思わせる小説だった。同じ新潮に原節子の発掘された「手帳抄」が掲載されていて、大スターの原が、横浜の自宅から世田谷の撮影所まで電車で通っていって、車などにのらなかったそうで、その電車の見聞を書いているのが驚きだった。
・新春初のおもろ・・。中川君ともう一人の常連さん、おもろも夫婦二人では大変で、今年一いっぱいかもしれないと、店主のヒデキさん、せいぜいこちらも頑張って飲もう!

by engekibukuro | 2017-01-08 10:00 | Comments(0)  

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