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1月9日(月)M「豚小屋ーある私的な寓話」

作:アソル・フガート、翻訳・演出:栗山民也、、地人会新社、新国立劇場小劇場
 アソル・フガートは南アフリカの劇作家だ。これまでアパルトヘイト(人種隔離政策)の真っただ中の南アフリカにあって、白人俳優と黒人俳優を同じ舞台に立つような演劇活動のために投獄までされた
「反アパルトヘイト」の闘士として知られている。その、フガートが、第二次大戦中、旧ソ連軍から脱走し、41年間「豚小屋」に隠れて生きた実在の人物の物語に刺激を受け、書かれた作品だ。
 登場するのは、北村有起哉が演じるパーヴェル・イワーノヴィッチと、田畑智子が演じる妻のブラスコービアの二人だけ・・。
 しかし、北村も田畑も懸命に演じているのに、しかもほとんど極限状態の物語なのに胸に迫ってこない。フガートの言葉として「わたしは、ロシアについて書いたのではない。また、豚を飼う農夫の物語について、でもない。豚小屋とはメタファーであり、わたしたちの現実のなかに見つけること出来る、多くの人間の出会う壁のような不自由について書いたつもりだ。」と言っている。ちなみに、この芝居は栗山が1991年、いまから26年前に上演された。この芝居をもどかしく感じたのは、”人間の出会う壁のような不自由”の性質が、現在ではまったく様相が変わったからだろう、としか考えられない。そのことを感じさせたことが、この芝居の現在での意義だろう。

by engekibukuro | 2017-01-10 09:53 | Comments(0)  

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