3月7日(火)M「白蟻の巣」新国立劇場

作:三島由紀夫、演出:谷賢一
 この作品は、ブラジル郊外の日系人が経営するコーヒー園での、経営者夫婦とその家のお抱え運転手夫婦とのダブル不倫を扱った芝居だ。
 そしてこの作品は1955年の岸田演劇賞を受賞した。初出は当時雑誌「文藝」で、それを読んでそのセリフの三島独特のレトリックに感動した覚えがある。しかし、舞台を観るのは初めてだ。
 パンフに載っている福田恒存のこの芝居についての批評が、この芝居の神髄をついている。
”(全略)三島氏の戯曲では、ことに「白蟻の巣」では、一つ一つのせりふが水晶の硬い切口を見るように、鋭く磨かれている。その決定的なせりふが綿密に性格や人間関係を造りあげていく過程は、光に照り映える美しいシャンデリアを、ぐるりから眺めるようなみごとさである。それがときにあまりに決定的であるために、その人物自身のことばであるよりは、その人物が否応なく作者から受けとらされた言葉であるような印象を与える。
 三島氏の戯曲のせりふは、登場人物相互間の、あるいは作者の登場人物にたいする的確な批評によって成り立っているのだ。それがときには、手も足も出ない息苦しさを観客に与えるが、同時に、現代劇がなずみがちな卑俗な現実をきっぱりと切断する。(後略)”
 つまり、読む戯曲、レーゼドラマとして優れていても、それを舞台化するのは、なかなかたいへんだといいうことで、この舞台でも平田満らが懸命に演じていたが、もうひとつ戯曲の輝きが受け取れなかった。これはこの戯曲の宿命だとおもうよりない。
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by engekibukuro | 2017-03-08 07:19 | Comments(0)  

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