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㋆3日(月)M「その人を知らず」新劇交流プロジェクト公演、あうるすぽっと

作:三好十郎、演出:鵜山仁、・東演、青年座、民藝、文化座、文学座 
5劇団、総勢23人、3時間半にわたる大作だ。”「なんじ殺すなかれ・・おのれの如く隣人を愛せよ」 純朴にイエスの教えを守り、召集を拒み続けた片倉友吉。彼は、名もない一介の計器工場で働く時計工である。しかし、彼の思いは戦時下においては非国民となり。憲兵にとらえられ過酷な拷問と、同僚からの迫害に耐え続けなければならなかった。友吉の徴兵忌避は周囲の人達をも窮地に追い込んでいく。父は自殺、弟は職を奪われ、自殺するように戦地に赴き戦死、そして母親が、妹、友人達が・・・。彼を信仰に導いた人見牧師も妹・治子もその渦の中に巻き込まれていく。それでも彼は「戦争はいかないことです」と子供のようにつぶやき続けるのだった。・・やがて敗戦が訪れる・・(後略)。”これはチラシのこの芝居の梗概を写したものだ。戦後、彼は徴兵拒否の英雄として扱われ、平和の時代に生きることになるのだが、工場の労働争議でも労使は仲良くしなければと言うばかりで・・。この芝居は、三好が実際に実在した人物をモデルにした作品で、実際に会うことは憲兵隊に拒まれてできなかった。三好はこの青年を”シンから愛している。と同時にそれと同じ強さで憎んでいる”と書いている。実際、極端に考えれば、徴兵拒否しても拷問を受けても死刑になることはないが、戦地では死ぬ・・。そういう矛盾に満ちている青年を、三好はその青年の周囲の人間を含めて、ち密に描き切った。そして複雑な気持ちをもたらす感動を受けるのだが、私は多くの登場人物の中で、友吉と留置場で一緒になったスリを演じた青年座の山本龍二の演技に感銘を受けた。彼は、友吉の矛盾に満ちたありようを、それを丸ごと受け入れ愛した人間なのだ。スリだが精一杯の善行を周囲に与え、この芝居で際立った存在感を示した。その演技は、三好の心底の友吉に対する気持ちを体現していると思わせたのだ。鵜山の隅々にわたるち密な演出をもたらしたこの舞台は、新劇交流プロジェクトの成果を十分に示した。終演後のアフタートークの司会は山田勝仁君だった。

by engekibukuro | 2017-07-04 10:17 | Comments(0)  

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