11月12日(日)

上原善宏著「路地の子」(新潮社)を読んだ。この本は、著者の被差別出身の食肉業で一代を築き上げた父親の人生を描いたノンフイクションだ。内容は、第一章 昭和三十九年、松原市・更池「今さら命乞いをしても遅いわ。そこでジッとしとれツ」、第2章 食肉業に目覚めた「突破者」の孤独「オレの周りのええ人は、みんなおれへんようになってまう・・」、第三章 牛を屠り、捌きを習得する日々「オレは捌き職人やで。ケイちゃんさえ付いてきてくれたら、どないなと食べていけるから」、第四章 部落解放運動の気運に逆らって「金さえあれば差別なんかされねん」。第5章 「同和利権」か、「目の前の銭」かー「人間は己の実益が絡んでこそ本気になる」、第六章 新同和会南大阪部長に就く「オレかて、もう後にはひけませんねや」、第7章 同和タブーの崩壊を物ともせず 「ワシの勘はまだ、鈍っていないなと思ったな」。
このような内容だが、被差別部落の実態がひしひしと伝わってくる本だ。それとともに人間の生の原点があからさまに伝わってくる本でもある。さらに部落解放運動、国の同和対策の変遷もこの本で良くわかった。なにより、常に牛を屠むる包丁を携行し、喧嘩は相手を殺す勢いで挑み、一代を築きあげた著者の父親の迫力満点の肖像が、見事に描き上げられた本だった。
 

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by engekibukuro | 2017-11-13 10:00 | Comments(0)  

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