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11月30日(木)M「管理人」シアタートラム

作:ハロルド・ピンター、翻訳:徐賀世子、演出:森新太郎
久しぶりに見ごたえたっぷりの舞台を観た。舞台は廃品=ガラクタで溢れかえっている。まったくの”ゴミ屋敷”。登場人物は3人、ゴミを拾ってくる男(アストン:忍成修五)と、この部屋からガラクタを処分したい男(ミック:溝端淳平)、この二人は兄弟らしい。それとアストンがガラクタ同様に拾ってきた男(デーヴィス:温水洋一)だ。彼らがどんな人生を送ってきたのか、ピンター何ひとつはっきりとは提示しない。すべてが曖昧だ。ただ、デービスはシッドカップというところに行けば、自分がなにものかというこがわかると言い張っているが、そこへ行くためにはいていく靴がないとか、雨がやまないとかいっていこうとしない。アストンはデービスをこの部屋の管理人にしたいというが、ニックはそれを承知しないらしい。すべては曖昧だが、曖昧さが増幅してうゆくとそれにつれて、デービスの存在感が増幅してくる。この舞台の最大の見どころは、デーヴィスを演じる温水の演技・・。私は温水が大人計画にいたころから観ていて、彼が舞台俳優として最高の役者だと思っていたが、この舞台でも、その力を存分にみせてくれたのだ。その温水と共演する若い忍成や溝端が両立するのかと危惧していたのだが、二人とも立派に温水と共演して芝居の興趣を盛り上げていた。ピンターは不条理劇の書き手だともいわれているが、この芝居はそんなわかりにくいところはみじんもない。我々がいつ遭遇しても不思議ではない世界だ。そのことを温水の演技が示してくれているのだ。森の演出も、このガラクタ部屋の出来事の緊張感あふれる曖昧さを十分に感じさせてくれたのだ。


by engekibukuro | 2017-12-01 14:19 | Comments(0)  

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