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「人形の家」9月6日Mシアターコクーン

作:イプセン、訳:除賀世子、演出:デヴィッド・ルボウー。舞台は客が四方から囲んで観るボクシングのリングのような四角の台。私はリングサイドで観られた。宮沢りえのノラはノラについての定説どうりの、人形扱いから自覚した女性への成長をきちんと、チャーミングに見事に演じた。TPT時代のルヴォウーの舞台の常連堤真一は宮沢の相手として申しぶんないが、今の時代ではやりにくいのかもしれないが、ノラに対する頑迷な支配力が弱い。終幕の二人の対決ではノラの一人な勝ちで、これでは家庭を捨てたノラの前途の多難さを暗示できない。しかし、ryヴォウーが語るとおり、この芝居は「問題劇」に終始すばかりでなく、サスペンスドラマとしても楽しめるもので、ルヴォウーの多面的、複合的演出が現在でも生きる「人形の家」の舞台を創りあげた。一番印象に残ったのは山崎一の演じたクロスタがいままでの舞台では陰険な暗いばかりの男だったが、ここではネルメスにたいするちゃんとした対立者として明確な存在だったこと。それといまでの地味な苦労まみれのクリステーネも神野三鈴の好演で魅力的な女性になって、このクロスタとクリステイーナの愛の復活のほうが実質的、人間的な関係でノラとヘルメスの空虚な関係を照らしだす存在になっている。ほか色々あるが、ルヴォウーらしい刺激的で楽しい舞台だった。

by engekibukuro | 2008-09-07 16:56 | Comments(0)  

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