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7月30日M★「現代能楽集イプセン」S★★「ピースの煙」

★作・演出:坂手洋二、燐光群、東京藝術劇場小ホール。坂手がパンフに書く。”私が勝手にイメージした「現代能」の方式に基づいて、イプセン戯曲を織り直したものである。題材を借りる、でもなく、現代化する、でもなく「現代能」にしたのである”。こちらは「現代能」のことはよくわからないが、能舞台=四角のプレイト上で演じられた「現代能を勝手に観てみよう。取り上げられたイプセンの戯曲はA「ノーラは行ってしまった(人形の家)」、B「ぶらんぶらん(ブラン)」、C「野鴨中毒(野鴨)」、D「ヘッダじゃない(ヘッダ・ガブラー」。A:ノーラが家出したあとにテスマン家に亡霊が現れる。椅子に坐った3人の男の主要人物とノーラの対話は、「人形の家」を追体験させるが、全体のシステムがよく飲み込めなかった。ノーラの馬渕英俚可は好演したが。B:この戯曲は初見参だが、原理主義牧師の狂気と周りの群集との激動が凝集されていた。ブラン役のいずかししゅうすけが芝居のペースをしっかり先導して、ブランの人間像を立ち上げた。Cは4編の中で最高の舞台だ。野鴨・森の象徴性と徹底した世俗的リアリズムを対比したこのイプセン戯曲の傑作を、その中核を正確に摘出して、俗物の真の存在感を見事な群集処理で際立たせ、俗世の犠牲者3人で演じられた少女ヘドヴィクの死への悼みが心底伝わった。Dはどうもピントが定まらず、戸惑いのほうが多かった。いずれにせよ、この舞台は現代のイプセンたらんとする意志も窺われる、刺激的な見応えのある試みだった。
★★作:原田宗典、演出:大谷亮介、壱組印、ザ・スズナリ。昭和21年の世相を原田の親たちの生き様をとおして見せる芝居で、大谷、宮島健、中西良太、かんのひとみらの芸達者の芝居を楽しむ舞台で、面白かったが、ラストの原田兄弟が念願のピ-スにやっとありつけて、煙をくゆらす場面が、いまひとつ決まらなかったのが残念・・・・。
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by engekibukuro | 2009-07-31 10:18 | Comments(0)  

7月29日M「オペラ・ド・マランドロ」東京藝術劇場

原作・作曲:シコ・プアルギ、脚本:鈴木勝秀、アトリエ・ダンカン。ブラジル版「三文オペラ」だ。背景は1941年のブラジル、軍政下でナチスドイツに賛同し、アメリカを敵視していた。全編ラテンミュージックでクルト・ヴァイルの音楽を聴ききなれているから、最初はちょっと違和感があった。マランドロとはならずもののこと。その頭目がマックス(別所哲也)だ。元版ブレヒトのピーチャム氏はこの版ではシュトリ-デル氏で、乞食商売の親玉ではなく、娼婦たちの元締めだ。このシュトリーデル氏を小林勝也が演じて舞台の要になっていた。圧巻なのは娼婦マルゴ(元版ではジェニー)を演じたマルシア、歌も芝居も舞台を圧する迫力満点。シュトリーデルの娘ルー(元版ではポリー)役の石川梨華もマックスを巡ってマルゴ・マルシアと対抗する強さを可憐に打ち出していた。脇ではオカマのジェニを演じた田中ロウマの演技も歌唱も絶品だ。ようやくラテン音楽の流れにのれて、終幕、マックスがマブ友達だった警視のタイガー(石井一孝)に裏切られて牢獄につながれ、マックスの目の前でマルゴとルーの大喧嘩の場の迫力と充実感はラテンミュージックの迫力ならではのもので、「三文オペラ」のこの場はオレの見た限りでは(10回ぐらいか)最高だ。処理が難題で有名な大団円は、ブタジルがナチヅドイツの敗北で軍事政権が倒れた背景で処理し、華やかなカーニバルでエンデイングだ。ここでやっと「マック・ザ・ナイフ」の合唱があり、ブレヒト・ヴァイルも楽しめたのだった・・・。 
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by engekibukuro | 2009-07-30 12:19 | Comments(0)  

7月28日S「戦場のような女」レパートリーシアターKAZE

ビエンナーレKAZE国際演劇祭2009。作:マテイ・ヴィスニュック、演出:浅野佳成。ボスニア紛争で敵に強姦された女性ドラの物語。敵は女性を捕まえ、一箇所に収容し、組織的に強姦する。性的快楽のためではなく民族撲滅のための手段だ。女の性は戦場なのだ。ドラはドイツの療養所に送られ、アメリカから来た女性の精神医に治療を受ける。精神的に壊滅寸前のドラとのコミュニケイションをとることの困難と苦渋が描かれ、最後に不幸にも子供を宿し、その子供を産むか否か、生まれた場合は女医がひきとるという問題がクローズアップされる。女医の祖父はボストンに住む、アイルランドからの移民だ。ボスニアには死体発掘の派遣団に参加したのだ。出口がないような暗い現実が提示されるが、ヴィスニュックは中に湖畔のピクニックでの女医とドラの酒盛りでバルカンの人種比べで二人が盛り上がるシーンを挿入してやわらげ、結末にはドラが子供を引き受ける。冷厳な現実と詩的な飛翔をたくみに織りあわせたテクストは素晴らしい。それゆえ俳優は高い水準が求められる。女医の柴崎美納、ドラの工藤順子は真摯に取り組んでテクストの真価を伝えたといえる。
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by engekibukuro | 2009-07-29 10:31 | Comments(0)  

7月25日M「箱」ストアハウスカンパニ江古田ストアハウス

構成・演出:木村真悟。この公演は「さよなら江古田ストアハウス」公演。25年存続した江古田ストアハウスが消防法の規制により、この公演で閉鎖する。「箱」は木村真悟の輝かしい独創による演劇の範疇にも、ダンスの範疇にも収まりきれないフィジカルアクト・パフォーマンスの処女作(1998年初演)の再演だ。7人の男女のパフォーマーが、舞台前面に積み上げられた幅90センチ、高さ30センチの木製の箱の背後で輪を描いて歩行する。このミニマルミュージックと伊澤知恵によろキーボードの演奏のリズムによる緩急の交差と非交差のらせん状の歩行スタイルもこのパフォーマンスの見所だ。やがて歩行者は前面の箱を運び出す。その箱は舞台のあちこちに置かれ、また積まれてゆく。これは子供のブロック遊びのように、箱の位置や形状が千変万化して、あるときは門になり、穴になり、彼らは箱と戯れ続ける。モノと人間の関わり、戦いはいかような意味づけにも開かれている。ストレートに胸を打つのは、パフォーマーの箱との戯れの真摯なアクション、眼差しの真剣さだ。積んでは倒し、積んでは倒す、スカラバサクレのような繰り返しが、体力の限度ぎりぎりで終焉する。最後に棒立ちする彼らの汗と胸の鼓動が見事な達成を明かし立てる。近頃めったにない心からの拍手ができた。江古田ストアハウスの閉鎖は残念だが、次の拠点でのストアハウスカンパニーの活動を大いに期待しよう。
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by engekibukuro | 2009-07-26 12:06 | Comments(0)  

7月24日S「COVER」ペンギンプルペイルパイル本多劇場

作・演出:倉持裕。PPPPの2本柱の俳優、小林高鹿、ぼくもとさきはPPPP加入いぜんから好きな俳優だし、今回の客演谷川昭一朗も好きな役者だから、期待して観にいった。が、風船に結んだ手紙が何年かあとに海で釣り上げられた話と、巻きついた木をじわじわと枯らしてしまうシメコロシイチジクという植物の話をモチーフにしたこの芝居はいまひとつピンとこなかった。というかよく理解が届かなかった。だが、帰ったら朝日新聞の夕刊に徳永京子さんのこの芝居の劇評が載っていた。なんと倉持の傑作だという絶賛だ。姉弟の間の感情を繊細に描いた傑作だということだ。そうかそういう芝居だったのかとかと、オレもトシでやきがまわったのかと不安になったが、どうもいまひとつ釈然としない・・・。むつかしいものだ。
★谷岡さん、この芝居を観ていたら感想をお願いします。
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by engekibukuro | 2009-07-25 12:17 | Comments(0)  

7月22日M★「宙をつかむ」S★★「血縁」

★副題ー海軍じいさんとロケット戦闘機ー、作・演出:宋英徳、演劇集団円、紀伊国屋ホール。戦時中のロケット開発の話と、海軍専用の割烹の店主で海軍が好きで好きでたまらない海軍マニアのじいさんの話が柱の芝居。多彩なエピソードがテンポよく進み、橋爪功演じるじいさんが、役者魂というべきものを感じさせる快演で場内を圧した。ただ、終戦後の終幕で、じいさんが海軍旗を振り回し、海軍の再起を叫ぶ場に拍手がきた。作者の意識には関係ないし、じいさんはただ海軍が純粋に好きなだけだが、今の田母神ブームの可視化を感じたのは僻目か?芝居の力はおそろしい。
★★作・演出:モダンスイマーズ。この芝居はモダンスイマーズ結成10周年記念公演。05年に蓬莱竜太作・演出で初演した「赤木五兄弟」の後日談。今回は蓬莱が書いたのではなく、劇団メンバー5人がそれぞれ話をもちよって合作した。死んだ父親の生き方を厳守して結束して一家で暮らす赤木工務店の五兄弟は、住んでいる町の人々の価値観を無視、敵視して振舞い、生活している。そのため町の人々から全くの嫌われ者になっている。今回は、10周年のお祭り気分があるので、パトロンを見つけてハワイ旅行としゃれ込んだが・・・・。
まあ、芝居はどうということもないが、赤木五兄弟のこの結束ぶりには、5人の役者の、周りになにを言われても自分たちの価値観に基づく芝居を貫くぞという決意表明を感じた。5人の役者はそれぞれ魅力的だし(蓬莱も末弟として出演)、なにより蓬莱という近頃まれな力量のある座付き作者がいるのだから、前途は洋々たるものだろう・・・。
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by engekibukuro | 2009-07-23 15:21 | Comments(0)  

7月21日S子供のためのシェイクスピア「マクベス」

紀伊国屋サザンシアター。脚本・演出:山崎清介。山崎の脚本は簡にして要を得た「マクベス」で、ポイント、ポイントはきちっと押さえて、たんなるダイジェストっではなく、見晴らしのよい舞台だった。いろいろな工夫がはこらしてあり、魔女3人の可笑しさや、へたするともたれてしまうバンコーの亡霊の出る宴会の場のシンプルで効果的な扱いなど、笑いを綯い混ぜた多彩な演出だった。石田圭祐のマクベスは魔女の預言に翻弄される迷いの深い男の悲劇性を際立たせた。伊澤磨紀はマクベス夫人とマクダフえをきちんと演じたが、魔女の一人の可笑しさが抜群だった。
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by engekibukuro | 2009-07-22 10:35 | Comments(0)  

7月19日M「とんでもない女」(作・演出:中津留章仁)

トム・プロジェクト、シアターΧ。2年前の舞台の再演だが、初演を観たとき面白かったのだが、中津留の作品だといことを特に留意しなかった。今年3月に中津留が主宰するトラッシュマスターズの「エレベーション」を観たが、近頃珍しい骨太の社会派の作品で驚いた。そのときも「とんでもな女」の作者だと思い出せなかった。このし芝居は下條アトム、川島なお美、吉田羊の三人芝居。着想もセリフもなかなかしゃれていて、よくできたウエルメイドプレイで、「エレベーション」とはまるで感触が異なる。しかし、注意してみると、都会と田舎の政治や選挙の相違とか、この芝居の女二人が被差別部落の出だとか、芝居の背後の社会にもきちんとポイントをおいているのだ。5年前に家出して音信不通だった妻が突然帰ってきて、いまでは若い女と暮らしている夫が・・・、その女が・・・、というのが芝居の出発点。その吉田羊が演じる若い女が個性的に面白く描けていて、夫を中に挟んだ女同士の攻防が芝居の中心。トム・プロジェクト特有のエンターテイメントの路線にきちんと沿った作品として成功している。ただ、妻が5年間何をやっていたのかとか、そういう芝居の背後の情報量が作者と客が不均衡で、理解するのに一寸疲れるところがある。役者では下条、川島はきちっと安定しているが、吉田の面白さは類をみないものだ・・・。
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by engekibukuro | 2009-07-20 11:20 | Comments(0)  

7月18日M「赤色エレジー」(作:別役実、演出:P・ゲスナー)   

Projrct Natter旗揚げ公演、プロヂューサー:綿貫凛、ザ・スズナリ。この劇の基は林静一の劇が。舞台には電信柱が4本ばかり立っているが、通常の別役劇の舞台と感触が違う。別役劇の基本トーンである乾いた感じより、湿った感じで、劇全体の状況は不条理ではあるが、劇の展開、人物たちの言動は条理劇の様相だ。主人公は過激派左翼運動の一員で、運動が衰退しつつ、内ゲバの恐怖に脅える日々だ。生活も困窮し、運動の同士でもあり、恋人ともうまくいっていない。田舎の父は死に、母は入院してしまう。それらが重なり、親友で同士の名を騙ってカンパの金を横領してしまう。それが恋人に露見してしまい彼は捨てられる。彼女は男の親友の許へ行ってしまう。貧窮と不運の日々の中で、ドストエフスキーを読むことだけが彼の救いだ。そういう鬱屈した男を寺十吾が生々しく演じ鬱屈が客の生理に届くようだ。一つの時代の終焉が感じられる舞台だ。親友は内ゲバに襲われ、遂には自殺してしまう。かっての恋人は親友の子を産む。終幕は同志たちでの花見の場面、酔ってみなこぞって流行歌をがなrっている座に子を背負った彼女がやってきて、同士の自殺を告げる。電信柱によじ登った主人公はワルシャワ労働歌を歌いだし、それが花見の合唱になる。ワルシャワ労働歌が左翼の壊滅を告げるエレジーと化した。
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by engekibukuro | 2009-07-19 11:34 | Comments(0)  

7月17日S「恋と布団」(作:唐十郎、演出:中野敦之)

唐ゼミ特設テント、建築会館中庭押入劇場。45分の一幕もの。中野はいままであまり知られていない唐作品を発掘して上演して成果をあげている。わたしはこういう短い作品があるとは知らなかった。蒲団を背負った青年が、瀬戸物屋の娘に恋してなかなか上手くいかず、ドン・ファンだと自称する男の介添えで、やっと娘に近ずくことができたが、なにかの拍子で店の瀬戸物が割れてしまい、その破片が娘の足の裏に刺さってしまう。それを抜くために娘の脚を高々とあげて・・・。初々しい恋物語で青年を演じた土岐泰章が長セリフを健闘した。唐ゼミは中野を先頭に唐の旧作を若い息吹で更新してゆく。この舞台も好サンプルだ。秋には浅草でオカマ100人芝居「下谷万年町物語」を上演する。
★この上演のあとの時間に「建築と劇空間」というシンポジウムが行われた。出席は唐十郎、室井尚、中野敦之、司会は建築家で新宿梁山泊の美術担当の大塚聡。テントを取り払った建築会館のシートを敷き詰めた中庭が会場で、満員の盛況。唐のファンの層の厚さを思い知らされた。唐作品の上演されたテント、劇場の写真が会場の壁に大写しされ、唐が色々なエピソードを交えながらその写真の現場、劇空間を開設してゆく。状況劇場、唐組だけでなく、第七病棟へ書き下ろした「ビニールの城」の浅草トキワ座の写真もあり、またバングラデイシュ公演の写真も。これらを見て、話をきいていると、いまさらながら唐十郎という天才的な演劇者は偉大というしかないなと思えてくる。
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by engekibukuro | 2009-07-18 11:18 | Comments(0)