8月29日(火)

ヤン・コット「シェイクスピアはわれらの同時代人」を読んで、シェイクスピアの作品の中でソネットがいかに重要な作品化かが解った。ソネットは若い青年と「黒い婦人」を相手にしたものだ。谷川俊太郎が名訳だと絶賛した吉田健一訳でその中でも頂点にたつ第十八番を。
 君を夏の一日に喩えようか。
 君は更に美しくて、さらに優しい。
 心無い風は5月の蕾を散らし、
 又、夏の期限が餘りにも短いのをなんとすればいいのか。
 太陽の熱気は時には堪へ難くて、
 その黄金の面を遮る雲もある。
 そしてどんなに美しいものもいつも美しくはなくて、
 偶然の出来事や自然の變化に傷つけられる。
 併し君の夏が過ぎることはなくて、
 君の美しさが褪せることもない。
 この数行によって君は永遠に生きて、
 死はその暗い世界を君がさ迷ってゐると得意げに言ふことは出来ない。
 人間が地上にあって盲にならない間、
 この数行は読まれて、君に生命を與へる。

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# by engekibukuro | 2017-08-30 10:08 | Comments(0)  

8月28日(月)

伊集院 静「旅人よ どの街で死ぬか、男の美眺」(集英社)
 主にヨーロッパ、それと上海の足のむくままの紀行文、男の旅は、酒と博打と女・娼館が切っても切れない・・。この旅の記憶を伊集院の美学で書いた紀行文だ。酒はスコットランドの多種多彩のモルトウイスキー、競馬とカジノはフランス、女はこれもフランス女が主力か・。
まあ、さ夏の一冊として、行きつけのカフェで読み切り、家に急いで戻って、ニッカの新しいボトルを開ける・・。

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# by engekibukuro | 2017-08-29 09:13 | Comments(0)  

8月27日(日)M「ワーニャ伯父さん」シス・カンパニー

作:アントン・チェーホフ、上演台本・演出:ケラリ-ノ・サンドロヴィッチ、新国立劇場小劇場
 シス・カンパニーの企画による「KERA meets CHEkHOVF」の三回目の公演だ。チェーホフの4大戯曲のうち、「かもめ」、「三人姉妹」がすでに上演されている。今回の上演は、ワーニャが段田安則、エレーナを宮沢りえ、ソーニャが黒木華、セレブリャーコフを山崎一、アーストロフを横田栄司だ。段田のワーニャは芝居の中心として立派に、つまりこの不幸な主人公をその全存在感を舞台に刻み付けた好演だった。そして、たぶんケラの芝居には初めてだと思う横田栄司が舞台の一つの要として舞台を深めて、さすが蜷川幸雄は重用した俳優だと改めて思わせた。そしてソーニャの黒木華。私は、まだソ連が崩壊する前の、セントペテルベルグをレニングラードだったころの、レニングラードのマールイ劇場の訪日公演の「ワーニャ伯父さん」が最高だと思っているが、そのときのソーニャを演じた女優を想起させた素晴らしいソーニャだった。セレブリャーコフ・エレーナ夫婦が去り、ソーニャがひそかに愛していたアーストロフも去って、普段のただただ耐えるだけの生活に戻って、鬱々たるワーニャ伯父さんを慰める、死ぬまで耐えて懸命に働いて、死んだ後の神様による慰めを頼りに”生きていきましょうよ”という台詞が心に染み入るようだった。そして、この家の壁にかかっているアフリカの地図、アーストロフがこの家を去り際に、この地図を観て、「アフリカは今頃暑いだろうな」とつぶやくのだが、昔からなぜこの家にアウリカの地図がかかっているのが不思議だったが、今夏もちゃんとかかっていた。安心した。

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# by engekibukuro | 2017-08-28 07:57 | Comments(0)  

8月26日(土)M「バールの賛歌ーバールを愛した女」詩劇ー試み其の二

原作:ベルトルト・ブレヒト、翻訳:岩淵達治、上演台本・演出:浅野佳成、東京演劇集団風
久しぶりに東中野の”風”の劇場の舞台を観た。ブレヒトの処女作「バール」を観たかったからだ。舞台は作りこんだとても装飾的なもので、大きなカバーをかけた塊が徐々にほぐれて人間がでてくる・・・。バールは天井から釣り下がって出現する。バールを演じたのは栗山友彦、バールを愛した女を渋谷愛が演じる。非常に馴致された演技で、装飾的な舞台にマッチしていたが、役者の表現の核が薄いような感じを持った。それでも久しぶりのブレヒト劇、多少の違和感はこちらの問題だろう。
 おもろ。ひさしぶりに沢さん、沢さんのCDをやっとほめることができた。中川君も来た。


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# by engekibukuro | 2017-08-27 09:48 | Comments(0)  

8月25日(金)S「幸福な動物」温泉ドラゴン、SPACE雑遊び

作:原田ゆう、演出:シライケイタ
温泉ドラゴンはシライケイタ、坂本篤、筑波竜一、いわいのふ健の4人のユニットとして出発したが、さらに今回の作者原田ゆうが座付き作者として参加した。さらに今回は女優の客演が充実していて、毎回参加する俳優座の清水直子、唐組の藤井由紀、無名塾の樋口泰子、さらに光藤依里、そして青年座のベテラン津田真澄が加わった。たぶん、中東あたりの紛争地帯の大衆食堂を営む三姉妹が中心になって回る芝居だ。姉の一人は難民を安全地帯に密航させることに尽力し、政府軍と反政府軍との争いも絶えない。ある日、この国の言葉を話せないずぶ濡れの外国の女性が迷い込んできたり、とても物騒な毎日だ。全員この新作にとりこみ、懸命に演じていて舞台は熱い、特に清水の熱演が心を打つ・・。とても見ごたえがある芝居だったが、注文もある。シライケイタは今年「連合赤軍」の舞台化の演出をして、「連合赤軍」の時代をとてもなまなましい現代に通じるアクチュアルなリアリテイを感じさせたのだが、この芝居では紛争地帯の現実がホームドラマの枠を超えなったこと、それにタイトルの「幸福な動物」というタイトルがよくわからないこと、いずれも見当違いの疑問かもしれないが、力作だからこその正直な感想を書いておく。

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# by engekibukuro | 2017-08-26 10:00 | Comments(0)