3月15日(月)S「女殺油地獄」MODE、笹塚ファクトリー

原作:近松門左衛門、台本:石川耕士、演出:松本修。近松の言葉を原文どうりに使って、石川が台本を書いた。今の日本語とは違うが、大体は察することができる。むしろ、現代語にしてしまっては、近松の原作のリアリテイが著しく損なわれるだろう。その結果、当時の大阪の町民の生き様、喜怒哀楽、大阪の商い、経済の仕組み、家族のありようが実感を保って伝わってきた。今でもそこらへんにいるに違いない、遊び好きな不心得ものが、調子をこいて過ごすうち、どんどん転落してゆく物語は昔の話ではない。松本は着実にストーリーを進め、殺しのシーンではマイルス・デヴィスのトランペット「死刑台のエレヴェーター」を高らかに響かせ、河内屋与平衛が捕縛される大詰めは、地の底から歌われるような黒人霊歌「ときには母のない子のように」をかぶせ、大阪の町人たちへの鎮魂の挽歌とした。こういうミスマッチのような選曲の素晴らしい効果は、松本の真骨頂で松本演出の随一の楽しみだ。役者では藤井びん、宮島健、文学座の山本道子が舞台を締めた。

▼メモ。月末までのヤリクリ予定、三月後半の観劇予定をつくる。前登志夫の遺歌集「野生の聲」を読む。
 ・淋しさに人はかすかに狂うべし落ち葉ふらせる見えざる梢
 ・死神か匂える薔薇か地平よりわれに近づく夕日赤かり
 ・人間の亡びたるのち雪雲の縁赤く燃えて日は暮れゆくか
夜は笹塚ファクトリー。久しぶりに大崎由利子さんに会う。隣は七字英輔さん。帰りに松本さんに挨拶。帰宅、ポテトグラタン、菜の花の白あえ、手羽元の煮付け。
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# by engekibukuro | 2010-03-16 13:01 | Comments(0)  

3月14日(日)M「マクベス」世田谷パブリックシアター

作:W・シェイクスピア、訳:河合祥一郎、構成・演出:野村萬斎、美術:松井るみ。マクベスを萬斎、マクベス夫人を秋山菜津子が演じ、それ以外の役を高田恵篤、福士恵二の元天井店桟敷組と万有引力の小林桂太の3人で演じる。非常にシンプルな組み合わせの「マクベス」で、1時間半で終わる。能狂言の表現術を踏まえた演出で、実験的な試みだ。ただの要約に陥りかねない試みだが、松井の球形の廃屋のような見事な美術が舞台の核になって、類例をみない中身の詰まった短縮版「マクベス」ができあがった。ダンシネーンの森の木の葉が雪とともに舞い落ちてくる終景が美しい。

▼メモ。k園から三軒茶屋へ。世田谷PTの「マクベス」が終わって谷岡さん、毎日新聞の高橋さんとカフェでお茶。帰りにコーヒータイムによって扇田昭彦著「蜷川幸雄の劇世界」読了。革命への夢を棄てきれないロマン派としての蜷川像をくっきり描いた本で、前著「唐十郎の劇世界」対になっている。著者はその幅広い教養、柔軟な感受性、舞台への共感力が総合された、やはり現在の日本の劇評家として第一人者であることを確かめられた本だった。帰宅、カツオのたたきと、いんげんのゴマよごし。教育テレビで糸井重里司会の吉本隆明の講演を見る。吉本さんは車椅子で登場。終わりに吉本家が写り、最後に猫が写った、吉本家の猫がすげえ立派だったので驚いた。
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# by engekibukuro | 2010-03-15 11:03 | Comments(0)  

★3月12日 ★★3月13日

★M「久保田万太郎作品 その二十一」(演出:大場正昭)みつわ会、六行会ホール。
「水のおもて」:大正時代の”べっこう”という簪や櫛を商っているお店の話。晦日で得意先に勘定をもらいに小僧たちが出向くが、折からの不景気で払ってくれなかったり、延ばされたりで店の主人や番頭は四苦八苦しているのに、得意先に出向いた一人の小僧が行方知らずになった。調べてみたら「お暇をいただきます」という書置きがでてきた。勘定をもらったまま、出奔してしまったのだ。親戚そのほか皆で探してみても見つからない。支払いの催促も重なってくるし、娘は晴れ着で歌舞伎座にいったりしているが、まずは明日まで待とうということになる。この主を演じるのは、元文学座の冷泉公祐、文学座にいた頃、久保田万太郎の一幕もので、この人が演じた芝居が、これぞ万太郎の世界の体現者だと感じた忘れられない舞台があった。今回の舞台も浅草のお店の主の苦渋を沈んだトーンで演じて、期待どうりの好演だった。
「燈火」:これも主役は元文学座の菅野菜保之。浅草の親方で精神を病んで臥せっていたが、やっと元気を取り戻して、客の相手も昔どうりにできるようになった。菅野は昔、文学座が新派の大矢市次郎を客演に呼んで万太郎の「大寺学校」で演じた役が、いまでもいきいきと思い出されるような見事なものだった。この親方の芝居も絶品だった。二つの芝居とも不景気で町が暗くなってなっている時の話で、今とそっくりだ。
S「風の杜ー再び」(作・演出:菅間勇)菅間馬鈴薯堂、王子小劇場。菅間の20年前の劇団卍時代の代表作を現在に合わせて書き直した芝居だ。卍時代のヒロイン、菅間夫人の稲川美代子だけが初演に出ていて、ほかは皆新しいメンバー。東京の都市下層民、荒川近辺の細民たちの生き様、幻想的な老婆殺しを描い芝居だが、時代の風化に抗うのは難しいことだ。ただ、菅間のそういう細民たちに対する眼差しの優しさはひしひしと感じられた舞台だった。
★★M「ランデイーおじざん」(作:佃典彦、演出:はせひろいち)ガマ発動機、ザ・スズナリ。ホームレスを元、バッテイングセンターに宿泊させて生活保護をピンハネする貧困ビジネスの話。そのホームレスの中の一人が170キロの球速のピッチングができる・・・夢でランデイー・ジョンソンに投げ方を教わったという。ただ、どうもアイデイア倒れの芝居で、尻切れとんぼ。伊東由美子の不良オバナンが面白かったが・・。
▼メモ。K園から下北沢スズナリへ。終わってパルコ劇場5月のパルコ劇場の三浦大輔作・演出、松尾ススキ主演の「裏切りの街」の前売りを池袋パルコのピアで買う。おもろで谷岡さんと、堀切さんに会う。芝居の四方山ばなし。帰宅、晩はポークソテイ。K馬はダメだった。
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# by engekibukuro | 2010-03-14 08:25 | Comments(0)  

3月12日

▼芝居を2本観たが、寝坊して午後の芝居に行く時間になってしまった。明日書く。
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# by engekibukuro | 2010-03-13 11:43 | Comments(0)  

3月11日SM「ヘンリー六世」彩の国さいたま藝術劇場

作:W・シェイクスピア、演出:蜷川幸雄、訳:松岡洋子、構成:河合祥一郎。全編そのまま上演すると9時間強の芝居を河合さんが台本を6時間に短縮・構成した舞台だ。それでも前編と後編に別けて、間に1時間の大休憩があって、開演13時、終演九時20分。昨年秋に新国立劇場で鵜山仁演出で全編上演して、数々の賞を受賞した芝居だ。どうしても比べてしまうのは致し方ない。しかし、演出の方針が違うので、両方ともそれぞれ比べ合わせて楽しむのがいい。鵜山演出はかなりリアリズムで、蜷川演出はスペクタクルの要素が強い。それと蜷川演出は、貴族たちの権力争いに巻き込まれた民衆の生活を見せるシーンが多いのが特徴だ。職人同士の決闘シーンの面白さとか、そんな民衆の息吹が舞台から感じられた。新国立で浦井健治が演じたヘンリー六世は蜷川版では上川隆也、ジャンヌ・ダルクをえんじたのはソニン、マーガレットは中嶋朋子だったが、蜷川版では大竹しのぶが二役演じた。それぞれ違った魅力で、異なる演出家で双方とも楽しめるのは、やはりシェイクスピアの戯曲が並外れた力を持っているからだろう。

▼朝、出版健保の歯科へ。先生に「お酒を飲んでいますね、治療中は酒は厳禁です。もし飲んだら治療をお断りするかもしれません」といわれてしまった。長年歯科に通ったが、こんなことは初めていわれた。そうか今朝、気付けにウイスキーを一滴飲んだのが口に臭ったのか。これは失礼なことだった、言われても仕方がない。さて、どうしよう。池袋西武でいなり寿司を買って、さいたま藝術劇場へ。前編と後編の間に1時間の休憩。1時開演で終わったのが9時半。初日なので蜷川さんがカーテンコールに現れた。帰りは内田洋一さんと「シアターアーツ」編集代表の高橋君と一緒。高橋君と佐々木敦「「演劇」のポテンシャル」の話をする。帰宅、水炊きだった。
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# by engekibukuro | 2010-03-12 12:20 | Comments(0)